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研究

研究成果

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植物の受精卵が形を変えながら伸びることを発見

植物の受精卵が形を変えながら伸びることを発見

2023.12.07 10:30

発表のポイント

  • 植物の受精卵が細胞伸長して第一分裂に至る過程について、形や速度の変化を精緻に捉えることに成功した。
  • 一般的な植物細胞とは異なり、受精卵は「先端成長」という特殊な様式で細長く伸びることを発見した。
  • 「先端成長」する他の細胞とも異なり、受精卵は成長段階に応じて形状や速度を変えながら伸びることを明らかにした。
 

概要

 植物の葉や根などの器官は、植物の上下方向(体軸)に沿って作られます。ほとんどの植物において、体軸は、受精卵が上下に非対称分裂することで確立されます。被子植物であるシロイヌナズナでは、受精卵がまず上方向に細胞伸長し、非対称分裂に至ることが知られていましたが、どのような過程を経て伸長するのかは不明でした。
 東北大学大学院生命科学研究科の松本光梨助教、中川朔未氏(修士1年生)、植田美那子教授と、秋田県立大学の康子辰博士、野々山朋信博士、石本志高教授、津川暁助教は、モデル植物のシロイヌナズナにおいて、受精卵が細胞伸長する様子をライブイメージングするとともに、得られた画像のブレを補正する新たな画像解析法「座標標準化法」を開発したことで、受精卵がどのように細胞伸長するかを精緻に追跡しました。その結果、細胞の全域が伸びる一般的な成長様式とは異なり、受精卵は細胞の先端だけが成長する「先端成長」という様式で伸長することを突き止めました。さらに、「先端成長」する植物細胞として知られている根毛との挙動を詳細に比較した結果、一定の太さと速度を保って伸長する根毛とは異なり、受精卵は細胞分裂の前に一過的に太さと速度を増すことを見出しました。
 今回の発見は、受精卵に特徴的な形状や速度の変化が、その後の非対称分裂に繋がる可能性を示しており、植物の体軸形成への理解が進むと期待されます。
 本研究成果はPlant and Cell Physiology誌の2023年11月号に掲載されました。
 
 
図1(A)座標標準化法の模式図。細胞膜を緑色で蛍光標識したシロイヌナズナ受精卵のライブイメージング像から細胞輪郭を抽出し、表面曲率をもとに特徴点を特定して整列させることで、観察中に生じたブレを補正した。(B)受精卵の先端半径の推移を表したグラフ(上)と、その変化を模式的に示した図(下)。スケールバーは10マイクロメートル(µm)を表す。
 
【論文情報】
タイトル:Coordinate Normalization of Live-Cell Imaging Data Reveals Growth Dynamics of the Arabidopsis Zygote
著者:Zichen Kang, Hikari Matsumoto, Tomonobu Nonoyama, Sakumi Nakagawa, Yukitaka Ishimoto, Satoru Tsugawa* and Minako Ueda*
*責任著者:
東北大学大学院生命科学研究科 教授 植田美那子
秋田県立大学機械工学科 助教 津川暁
筆頭著者:
東北大学大学院生命科学研究科 助教 松本光梨
秋田県立大学機械工学科 博士研究員 康子辰
掲載誌: Plant and Cell Physiology
DOI: 10.1093/pcp/pcad020
URL: https://doi.org/10.1093/pcp/pcad020
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 植田美那子
TEL: 022-795-6713
E-mail: minako.ueda.e7(at)tohoku.ac.jp