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mRNAに刻まれた「タンパク質工場」の稼働効率 細胞のアイデンティティを決める翻訳メカニズムの解明

mRNAに刻まれた「タンパク質工場」の稼働効率 細胞のアイデンティティを決める翻訳メカニズムの解明

2024.08.02 11:00

発表のポイント

  • 遺伝子ごとの翻訳効率を生体内の特定の細胞種で測定するための技術を開発しました。
  • 脳を構成する神経細胞とグリア細胞の間で、翻訳効率が10倍以上異なる遺伝子を168個同定しました。
  • 翻訳効率が異なる遺伝子の多くでは、非翻訳領域による制御が生じており、それが細胞の多様性創成に貢献することが明らかになりました。
  • アルツハイマー病や自閉症などの神経機能障害や神経変性疾患の発生メカニズムを分子レベルで理解することにつながると期待される成果です。
 

概要

 
 私たちの体を構成する多彩な細胞のほとんどは同一のゲノムを持ちます。この「同じゲノムから多彩な細胞がどのようにして生まれるか」は、生物学における未解決の問題です。ゲノムからの遺伝子発現は主に転写と翻訳という二つの段階からなりますが、これまで転写については細胞種間の違いが詳細に明らかにされてきた一方で、翻訳の多様性についてはその多くが不明でした。
 DNAの情報を写し取った(転写した)mRNAは、「タンパク質工場」であるリボソームと結合し、そこでタンパク質が合成されます。東北大学学際科学フロンティア研究所の市之瀬敏晴准教授、生命科学研究科の谷本拓教授らの研究グループは、ショウジョウバエの神経細胞とグリア細胞において、mRNAと結合するリボソームの数を定量することで、mRNAあたりの翻訳効率を細胞種間で比較しました。その結果、神経細胞とグリア細胞で翻訳効率が大きく異なる遺伝子を網羅的に同定することに成功し、特に神経機能に重要な遺伝子はグリア細胞での翻訳効率が極端に低く、その抑制には、上流のタンパク質をコードしない配列(5' UTR)が重要な役割を果たしていることを発見しました。
 本研究は、翻訳制御による細胞種多様性の創成メカニズムを明らかにしたといえます。
 本成果は7月16日、生物学分野の専門誌eLifeに掲載されました。
 
 
図1. 神経機能に重要な遺伝子は、神経細胞では活発に翻訳される一方、グリア細胞では上流非翻訳領域(5' UTR)でリボソームが停滞し、翻訳が抑制される。
 
 
【論文情報】
Toshiharu Ichinose Is a corresponding authorShu KondoMai KannoYuichi ShichinoMari MitoShintaro IwasakiHiromu Tanimoto (2024) Translational regulation enhances distinction of cell types in the nervous system. eLife
DOI:doi.org/10.7554/eLife.90713
URL: https://elifesciences.org/articles/90713v1
 
 
 
関連リンク
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所 准教授 市之瀬敏晴
TEL: 080-7735-9565
Email: toshiharu.ichinose.c1*tohoku.ac.jp
東北大学生命科学研究科 教授 谷本拓
TEL: 022-217-6223
Email: hiromut*m.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
 
(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所 企画部 特任准教授 藤原英明
TEL: 022-795-4353
Email: hideaki*fris.tohoku.ac.jp
東北大学学際科学フロンティア研究所 企画部 特任講師 児山洋平
TEL: 022-795-4353
Email: yohei.koyama.e2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
 
 
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