1966年 神奈川県横浜市の生まれです。多くの機関で仕事をしてきましたが、いつのまにか東北大での勤務が一番長くなっていました。ところで「牛に引かれて善光寺参り」という言葉がありますね。「牛」を生物活性分子に例えれば、私の研究スタイルは、まさにこの言葉通りです。どの牛について行くかが、運命の分かれ道。分子に導かれるまま、最近はオートファジーの研究に深く関与しています。
教授 有本 博一
キャンパス | 片平 キャンパス |
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所属研究室 |
分子情報化学
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連絡先 | 022-217-6201 |
arimoto@tohoku.ac.jp | |
ホームページ | http://www.agri.tohoku.ac.jp/bunseki/index-j.html |
経歴 |
博士(理学、慶大)。旭硝子、静岡大理、名大院理勤務を経て2005.4より生命科学研究科教授。この間1996-1997 文部省在外研究員(ペンシルバニア大学A. B. Smith, III研究室)。2001-2005 科学技術振興機構 さきがけ研究21研究者(合成と制御領域)、2002-04 文部科学省学術調査官(科研費担当)を兼職。 |
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著書・論文 |
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所属学会 |
日本化学会、アメリカ化学会、有機合成化学協会、日本農芸化学会、日本ケミカルバイオロジー学会、日本NO学会 |
担当講義 |
分子情報化学特論,生命情報解析学(農学部),分析化学(農学部)ほか |
最近の研究について
- オートファジーは、細胞内の分解システムで飢餓応答としてよく知られていますが、癌,感染症,神経変性疾患などの疾患とも関係があります。私達は、ヒトに内在する化合物8-ニトロcGMPが、オートファジー誘導因子であることを発見しました(2013年)。たとえば、細胞内に侵入したA群連鎖球菌は、8-ニトロcGMPと反応して「グアニル化修飾」をうけたのち、ユビキチン化を介してオートファジー分解されます。つまり、グアニル化修飾は分解すべきものの「目印」として機能していると考えられます。
2019年に論文発表したAUTAC(オータック)は、グアニル化修飾の応用です。既存のオートファジー誘導剤が、無差別に相手を分解するのに対して、AUTACは特定の相手(例えばタンパク質や機能不全ミトコンドリア)を狙い撃ちして分解します。疾患のもとを取り去るという、直接的で強力な創薬手法となりそうです。幅広い研究者と共同して、AUTACの疾患治療応用を追求していきます。 - バンコマイシンは院内感染の原因となるMRSA治療の切り札です。この「切り札」の効かない耐性菌が出現し臨床現場の脅威となっています。私たちは分子設計によってバンコマイシン耐性菌に有効な新分子の開発をおこない成果を挙げています。
- 私達の本来の専門は合成化学です。ピンナ酸,ハリクロリン,ケンドマイシンなど生物活性天然物の全合成を達成するとともに、新規合成手法の開発も行っています。最近では、超原子価ヨウ素試薬IBXを用いて、第一級アルコールから1炭素短い鎖長のカルボン酸を生じる興味深い減炭反応を発見しました。
- 北海道大学情報科学研究科が開発したEPRイメージング装置の応用として、生体イメージング用のスピンプローブの開発を行っています。