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研究分野

脳生命統御科学専攻 :
神経ネットワーク講座

研究

木村 慧 (兼)

助教 木村 慧 (兼)
キャンパス 片平 キャンパス
所属研究室 脳神経システム
連絡先 022-217-5052
E-mail kei.kimura.c1@tohoku.ac.jp
Researchmap
 
Google scholar
 
我々の複雑な思考や心のはたらきを生み出す脳のネットワークの仕組みを知るためには、「構造」と「機能」の両面から神経回路の役割を解き明かす必要があります。私は、ヒトに近い脳構造をもつ霊長類(ニホンザル)の脳で、神経回路の構造を調べる研究をしています。特定の神経回路の活動を操作し、行動がどのように変化するかを観察することで、感情をコントロールする神経回路の全体像を解明を目指しています。
経歴
2013年 3月 岩手県立盛岡第一高等学校 卒業
2017年 3月 東北大学理学部生物学科 卒業
2019年 3月 京都大学大学院理学研究科生物科学専攻 霊長類学・野生動物系(修士課程)修了
2021年 12月 京都大学大学院教育支援機構 奨励研究員(~2022年3月)
2023年 4月 東北大学大学院生命科学研究科 学術研究員(~2024年3月)
2023年 4月 東北大学動物・遺伝子実験支援センター 学術研究員(兼)(~2024年3月)
2024年 3月 京都大学大学院理学研究科生物科学専攻 霊長類学・野生動物系(博士後期課程)修了
2024年 4月 現職
2024年 4月 東北大学動物・遺伝子実験支援センター 助教(兼)
著書・論文
… Co-first author

Kaneko T, Matsumoto J, Lu W, Zhao X, Ueno-Nigh LR, Oishi T, Kimura K, Otsuka Y, Zheng A, Ikenaka K, Baba K, Mochizuki H, Nishijo H, Inoue KI, Takada M (2024) Deciphering social traits and pathophysiological conditions from natural behaviors in common marmosets. Current Biology 34(13), 2854-2867.e5.
 
Kimura K, Nagai Y, Hatanaka G, Fang Y, Tanabe S, Zheng A, Fujiwara M, Nakano M, Hori Y, Takeuchi RF, Inagaki M, Minamimoto T, Fujita I, Inoue KI, Takada M (2023) A mosaic adeno-associated virus vector as a versatile tool that exhibits high levels of transgene expression and neuron specificity in primate brain. Nature communications 14(1), 4762. https://doi.org/10.1038/s41467-023-40436-1 (「時実利彦記念神経科学優秀博士研究賞(2024年)」、「京都大学ヒト行動進化研究センター最優秀論文賞(2024年)」受賞)
 
Inagaki M, Inoue KI, Tanabe S, Kimura K, Takada M, Fujita I (2023) Rapid processing of threatening faces in the amygdala of nonhuman primates: subcortical inputs and dual roles. Cerebral cortex 33(3), 895-915.
 
Ohara S, Yoshino R, Kimura K, Kawamura T, Tanabe S, Zheng A, Nakamura S, Inoue KI, Takada M, Tsutsui KI, Witter MP (2021) Laminar Organization of the Entorhinal Cortex in Macaque Monkeys Based on Cell-Type-Specific Markers and Connectivity Frontiers in neural circuits 15, 790116.
 
Mimura K, Nagai Y, Inoue KI, Matsumoto J, Hori Y, Sato C, Kimura K, Okauchi T, Hirabayashi T, Nishijo H, Yahata N, Takada M, Suhara T, Higuchi M, Minamimoto T (2021) Chemogenetic activation of nigrostriatal dopamine neurons in freely moving common marmosets. iScience 24(9), 103066.
 
Kato S, Sugawara M, Kobayashi K, Kimura K, Inoue KI, Takada M, Kobayashi K (2019) Enhancement of the transduction efficiency of a lentiviral vector for neuron-specific retrograde gene delivery through the point mutation of fusion glycoprotein type E. Journal of neuroscience methods 311, 147-155.
 
所属学会
日本神経科学学会, 北米神経科学学会

最近の研究について

 近年の神経科学では、神経細胞に光や人工的な化学物質に対する受容体を発現させ、人為的に神経活動を操作する手法が頻繁に用いられています。これらの手法を利用するためには、神経細胞に外来遺伝子を導入し、受容体を発現させる必要があります。霊長類は、マウスやラットと異なり繁殖サイクルが長いため、遺伝子組換え動物の系統を作成するのが難しく、外来遺伝子の導入には、神経細胞に感染して遺伝子発現を促す「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」などのウイルスベクターが使用されています。
 しかし、霊長類の脳はげっ歯類に比べて外来物質に対する免疫反応を起こしやすく、ウイルスベクターの感染が炎症反応を引き起こすことがあります。そこで、霊長類の脳で免疫反応を起こしにくいAAV2と、遺伝子発現効率が高いAAV1の2種類のAAVベクターのカプシドを一定の割合でミックスした「AAV2.1ベクター」という新しいモザイクベクターを作成しました(Kimura et al., Nat Commun 2023)。
 現在は、このAAV2.1ベクターなどのツールを活用し、霊長類の内側前頭皮質がハブとなる情動ネットワークの構造と機能を解明する研究を進めています。
 

メッセージ

 研究は、基本的に思い通りにいかないことの連続です。試行錯誤が好きでガッツのある人でも、失敗が重なれば落ち込んでしまうこともあるでしょう。そんなときにあなたを支えてくれるのが、人との“つながり”です。異なる考えや立場の人との会話が、行き詰った現状を打破するヒントにつながるかもしれません。そして、もし神経回路の“つながり”にも興味が湧いたら、私達と一緒に研究を始めませんか。