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研究分野

生態発生適応科学専攻 :
生態ダイナミクス講座

研究

酒井 聡樹

准教授 酒井 聡樹
キャンパス 青葉山 キャンパス
所属研究室 植物繁殖生態
連絡先 022-795-6697
E-mail sakai@tohoku.ac.jp

 植物の進化生態学が専門です。植物の生態的性質がなぜ進化したのかを、「適応的な性質が進化した」という視点から解き明かそうとしています。とくに興味を抱いているのが植物の繁殖戦略の進化です。花を作り、訪花昆虫を誘引し、種子を結実させる。この過程は、植物種間で実に多様に分化しており、さまざまな不思議が詰まっています。その繁殖戦略が適応的な理由は何なのか。なぜ、種によって異なる繁殖戦略を採るのか。こうしたことを、数理モデルを用いた理論的解析と、野外調査による実証的研究により解明しようとしています。
 「これから論文を書く若者のために」などの、論文執筆・プレゼンテーションの仕方に関する本もたくさん書いています。論文・プレゼンに関する出張講義も行っています。

経歴

京都大学理学部卒業
東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程修了(理学博士)
農林水産省草地試験場研究員を経て現職

著書・論文
酒井 聡樹 (2015) これから論文を書く若者のために:究極の大改訂版 共立出版
 
酒井 聡樹 (2018) これから学会発表する若者のために:ポスターと口頭のプレゼン技術 第2版 共立 出版
 
酒井 聡樹 (2013) これから研究を始める高校生と指導教員のために:研究の進め方・論文の書き 方・口頭とポスター発表の仕方 共立出版
 
酒井 聡樹 (2017) これからレポート・卒論を書く若者のために 第2版 共立出版
 
酒井 聡樹 (2011) 100 ページの文章術:わかりやすい文章の書き方のすべてがここに 共立出版
 
酒井 聡樹・高田 壮則・東樹 和宏 (2012) 生き物の進化ゲーム 大改訂版 共立出版
 
酒井 聡樹 (2002) 植物の形:その適応的意義を探る 京都大学出版会
 
  1. Matsuhashi, S., Kudoh, H., Maki, M., Cartolano, M., Tsiantis, M., Itagaki, T., and Sakai, S.  (2016) Invasion history of Cardamine hirsuta in Japan inferred from genetic analyses of herbarium specimens and current populations.  Biological  Invasions 18:1939-1951.
  2. Sakai, S.  (2016) How have self-incompatibility haplotypes diversified? Generation of new haplotypes during the evolution of self-incompatibility from self-compatibility.  American Naturalist 188:163-174.
  3. Itagaki, T., Kimura, M. K., Maki, M. and Sakai, S.  (2016) Differential self-fertilization rates in response to variation in floral traits within inflorescences of Aquilegia buergerianavar. oxysepala (Ranunculaceae).  Botanical Journal of the Linnean Society 181:294-304.
  4. Oka, C., Itagaki, T., and Sakai, S.  (2016) Effect of the number of embryos in a seed and of seed size on seedling emergence and growth in polyembryonic Ophiopogon japonicusvar. umbrosus (Asparagaceae).  Botany 94:261-268.
  5. Matsubara, Y. and Sakai, S.  (2016) The role of flood regime on invasive success of exotic species growing in riparian environments.  Biological Invasions 18: 793-808.
  6. Fusato, Y., Itagaki, T., Oguro, M., and Sakai, S.  (2015) Effect of change in floral openness with floral age on floral display and reproduction in Gentiana.  Acta Oecologica 67:17-23.
  7. Itagaki, T., Kimura, M. K., Lian, L., and Sakai, S. (2015) Development of microsatellite markers for Aquilegia buergeriana var. oxysepala (Ranunculaceae), a vulnerable Japanese herb.  Plant Species Biology 30:159-162.
  8. Oguro, M. and Sakai, S.  (2015) Relation between flower head traits and florivory in Asteraceae: A phylogenetically controlled approach.  American Journal of Botany 102:407-416.
  9. Onodera, H., Oguro, M., and Sakai, S.  (2014) Effects of nutrient contents and defense compounds on herbivory in reproductive organs and leaves of Iris gracilipes.  Plant Ecology 215:1025-1035.
  10. Sakai, S. and Wakoh, H.  (2014) Initial invasion of gametophytic self-incompatibility alleles in the absence of tight linkage between pollen and pistil S alleles.  American Naturalist 184:248-257.
  11. Oguro, M. and Sakai, S. (2014) Difference in defense strategy in flower heads and leaves of Asteraceae: multiple species approach.  Oecologia 174:227-239.
  12. Sakai, S. (2013) Evolutionarily stable size of a megagametophyte: evolution of tiny megagametophytes of angiosperms from large ones of gymnosperms.  Evolution 67:539-547.
  13. Matsuhashi, S., Sakai, S., and Kudo, H.  (2012) Temperature-dependent fluctuation of stamen number in Cardamine hirsuta (Brassicaceae).  International Journal of Plant Sciences 173:391-398.

詳しくは下記を参照
http://hostgk3.biology.tohoku.ac.jp/sakai/paper/paper-e.html

所属学会

日本生態学会
アメリカ生態学会
アメリカ進化学会
アメリカ植物学会

担当講義

植物進化生態学(5セメスター)

最近の研究について

植物の繁殖戦略の進化に関して、以下のような研究を行っています。

自殖の進化
 多くの植物は両性です。すなわち、同一個体が花粉と胚珠の両方を生産します。そのため、自分の花粉を受精して種子生産をする自殖が可能です。自殖には、他個体との交配なしに種子生産をできるという有利点と、種子の質が低下してしまうという不利点とがあります。これら有利点・不利点が絡み合い、ある植物は自殖を積極的に行い、ある植物は自殖を回避しています。どのような条件で自殖が進化するのか。自殖が、他の繁殖形質の進化にどのような影響を与えるのか。こうしたことを、主に理論的に解析しています。

訪花昆虫の誘引戦略
 虫媒花は、目立つ花をつけたり蜜を生産したりして訪花昆虫を誘引しています。その誘引戦略を解析しています。訪花昆虫がどのような花に誘引されるのか、それは、花のどのような形質と関係しているのか。これらのことを、野外調査を中心に調べています。

花生産における性投資戦略
 花は、雌器官(雌しべ)・雄器官(雄しべ)・誘引器官(花弁・蜜)からなります。これら各器官への資源投資量は植物種によって大きく異なります。同一種の個体間でも異なることがあります。さらには、同一個体の花間でも異なりえます。なぜ、このような変異が進化しているのでしょうか。植物は、繁殖成功が最大になるような、これら各器官への資源投資比を進化させているはずです。進化的に安定な資源投資を、理論的実証的に解析しています。

胚珠と種子の生産戦略
 種子は、自身の子孫を残すための器官です。そのため種子の生産戦略も非常に多様に進化しています。たとえば、種子の大きさは植物種によって大きくことなります。これはおそらく、子孫を残す上で有利な大きさが、条件に応じて異なるためです。一方、胚珠は、受精して種子となります。そのため、どのような性質の種子を作るのかということと、どのような性質の胚珠を作るのかが密接に関連しています。胚珠・種子の生産戦略を統一的に捉え、子孫を残すための植物の戦略を解明しようとしています。

メッセージ

 植物の生態的性質は、実に多様です。たとえば、花の色や形は、種間・集団間 ・個体間でさまざまに異なります。種子の大きさは、椰子の実のように大きなものから、ランのように塵のようなものまであります。酒井研究室では、こうした生態的性質の多様性が「なぜ」進化したのかを明らかにしようとしています。その性質を持つことが、生存や繁殖において有利であったという視点から、その性質が進化した理由を見出そうというものです。研究手法は、野外調査・理論的解析が中心です。
 酒井研究室の特徴は、学生さん各自が、自分の興味に基づいて自由に研究テーマを決めているということです。自分のやりたいことを自由にやることができます。研究室としてのテーマがあり、それをやらせるということは一切ありません。
 植物の多様性を目にして、その不思議さに心打たれる人、なぜ進化したのか解明したいと思う人は、酒井研究室で、植物の進化生態学の研究をしてみませんか!