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研究分野

分子化学生物学専攻 :
協力教員

研究

本橋 ほづみ

教授 本橋 ほづみ
キャンパス 星陵 キャンパス
所属研究室 レドックス制御
連絡先 022-717-8089
E-mail hozumi.motohashi.a7@tohoku.ac.jp
ホームページ https://sites.google.com/view/motohashi-lab/home
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 1966年、鹿児島生まれ、仙台育ちです。幼稚園から大学まで、自宅生でした。医学部卒業後は2年間、耳鼻科医として臨床研修をうけて、大学院の途中から遺伝子発現の巧妙な制御機構に魅せられて生化学・分子生物学の分野に転向しました。それ以来、一貫してCNC因子とsMAF因子からなる2量体による転写制御機構の解明に挑み、それが生体の恒常性維持機構の中核をなしていることを明らかにしてきました。現在は、特に、レドックス応答を担う転写因子NRF2の機能を解明することを通して、酸化ストレスと加齢の関係を明らかにしたいと考えています。代表的な加齢疾患であるがん、慢性炎症、神経変性といった病態におけるNRF2の役割とその機能メカニズムの解明を目指して研究を進めています。

経歴

1990年東北大学医学部卒。1996年東北大学大学院医学研究科修了。博士(医学)取得。筑波大学、米国ノースウェスタン大学、を経て、2006年に東北大学大学院医学系研究科助教授。2009年に同ラジオアイソトープセンター准教授、2013年より東北大学加齢医学研究所教授。

著書・論文
  1. Akaike T, Ida T, Wei FY, Nishida M, Kumagai Y, Alam MM, Ihara H, Sawa T, Matsunaga T, Kasamatsu S, Nishimura A, Morita M, Tomizawa K, Nishimura A, Watanabe S, Inaba K, Shima H, Tanuma N, Jung M, Fujii S, Watanabe Y, Ohmuraya M, Nagy P, Feelisch M, Fukuto JM, Motohashi H.  Cysteinyl-tRNA synthetase governs cysteine polysulfidation and mitochondrial bioenergetics.  Nat Commun 8, 1177, 2017.
  2. Kitamura H, Onodera Y, Murakami S, Suzuki T, Motohashi H.  IL-11 contribution to tumorigenesis in an NRF2 addiction cancer model.  Oncogene 36, 6315-6324, 2017.
  3. Kobayashi EH, Suzuki T, Funayama R, Nagashima T, Hayashi M, Sekine H, Tanaka N, Moriguchi T, Motohashi H, Nakayama K, Yamamoto M.  NRF2 suppresses macrophage inflammatory response by blocking proinflammatory cytokine transcription.  Nat Commun 7, 11624, 2016.
  4. Shirasaki K, Taguchi K, Unno M, Motohashi H, Yamamoto M.  Nrf2 promotes compensatory liver hypertrophy after portal vein branch ligation in mice.  Hepatology 59, 2371-2382, 2014.
  5. Mitsuishi Y, Taguchi K, Kawatani Y, Shibata T, Nukiwa T, Aburatani H, Yamamoto M, Motohashi H.  Nrf2 redirects glucose and glutamine into anabolic pathways in metabolic reprogramming.  Cancer Cell 22, 66-79, 2012. 
  6. Motohashi H, Kimura M, Fujita R, Inoue A, Pan X, Takayama M, Katsuoka F, Aburatani H, Bresnick EH, Yamamoto M.  NF-E2 domination over Nrf2 promotes ROS accumulation and megakaryocytic maturation.  Blood 115, 677-686, 2010. 
  7. Komatsu M, Kurokawa H, Waguri S, Taguchi K, Kobayashi A, Ichimura Y, Sou Y.-S., Ueno I, Sakamoto A, Tong KI, Kim M, Nishito Y, Iemura S.-i., Natsume T, Ueno T, Kominami E, Motohashi H, Tanaka K, Yamamoto M.  The selective autophagy substrate p62 activates the stress response transcription factor Nrf2 through inactivation of Keap1.  Nat Cell Biol 12, 213-223, 2010.
  8. Motohashi H, Katsuoka F, Engel JD, Yamamoto M.  Small Maf proteins serve as transcriptional cofactors for keratinocyte differentiation in the Keap1-Nrf2 regulatory pathway.  Proc Natl Acad Sci USA 101, 6379-6384, 2004.
  9. Kusunoki H, Motohashi H, Katsuoka F, Morohashi A, Yamamoto M and Tanaka T.  Solution structure of the DNA-binding domain of MafG.  Nat Struct Biol 4, 252-256, 2002.
  10. Motohashi H, Katsuoka F, Shavit JA, Engel JD, Yamamoto M.  Positive or negative MARE-dependent transcriptional regulation is determined by the abundance of small Maf proteins.  Cell 103, 865-875, 2000. 
所属学会

日本生化学会、日本癌学会、日本分子生物学会、日本酸化ストレス学会

担当講義

酸化ストレス応答を支える遺伝子発現制御機構(生命科学研究科)
糖代謝とエネルギー産生の生化学(医学部・歯学部)

最近の研究について

 レドックス制御と個体老化の関係が現在の研究室の大きなテーマです。老化とは何か?私達は現在、(1)環境応答不全、(2)炎症の持続、という2つの仮説を立てて、その検証に挑んでいます。
(1)環境応答不全
 老化のプロセスは、生体と環境との関わりなくして理解することはできません。ヒトがその一生を通して環境からうける化学的ストレス・物理的ストレス・生物学的ストレスの総体をエクスポゾーム (Exposome) として捉えようという動きが欧米を中心に始まっています。環境からのストレスは多くの場合、生体のレドックスバランスを撹乱します。レドックス制御の鍵因子であるNRF2を適切に活性化させることが老化の遅延に有効と考えられます。私達は現在、習慣的運動がNRF2によるストレス応答を促進する可能性を考えて研究を進めています。また、NRF2による新しいイオウ代謝とエネルギ−産生機構の解明に挑んでいます。
(2)炎症の持続
 炎症の持続がもたらす加齢関連疾患として、現在の高齢社会において大きな問題となっているアルツハイマー病と慢性閉塞性肺疾患 (COPD) を取り上げています。NRF2による抗炎症作用の分子機構の理解と、加齢関連疾患の予防への応用を目指しています。炎症反応では、活性酸素種や活性窒素種、活性イオウ種などさまざまな活性分子が産生されます。最近私達は、制御性T細胞非依存的に、NRF2がT細胞の活性化を抑制し、自己免疫疾患を改善することを見いだしました(Suzuki et al, Mol Cell Biol 2017)。これらの活性分子と老化との関係を追究し、NRF2が有する抗炎症作用を利用した抗老化戦略を確立することを目指しています。

メッセージ

 私達の研究室では、生化学とマウスの発生工学を組み合わせた実験系を用いることが特徴です。ある生化学反応や分子生物学的な観察が、統合された個体の中において、どの程度の重要性を有するのか、絶えず意識しながら検証を行うことを大事にしています。最終的な目標は、ヒトの健康増進と健康長寿の実現です。
 サイエンスは芸術に似た自己表現です。研究では、情熱をもって目標に邁進してほしいと思っています。