Google scholar
http://scholar.google.com/citations?user=XaqBhzMAAAAJ
Researcher ID
http://www.researcherid.com/rid/E-6300-2011
渡辺は、愛媛県今治市で高校時代までを過ごしました。今治市は3本かかる本四連絡橋のうち、今治-尾道ルートの四国側の玄関口で、タオルと造船の町です。近年、「今治タオル」や、ゆるキャラの「バリィさん」がずいぶんと「今治」の知名度を上げてくれているので、ご存じの方が増えてきているのかもしれません。1984年4月に東北大農学部農学科に入学し、大学院の途中から助手になり、13年ほど仙台で過ごしました。1997年12月に岩手大学農学部助教授に昇任し、7年あまり盛岡で教育研究を行ったあと、2005年4月から教授として本研究科に着任しました。着任と同時に、「植物生殖遺伝分野」を立ち上げ、植物の生殖、特に、「アブラナ科植物の自家不和合性」における自他識別機構の解明を行い、NatureやScienceをはじめとした世界的にも高く評価されている学術雑誌に論文を発表してきました。
2017年度の改組で分野名を「植物分子育種分野」に改めましたが、准教授の独立に伴い、「植物の生殖形質」を研究するという原点に立ち戻り、2024年4月から「植物生殖システム分野」としました。植物は発芽した場所に根を生やし、その環境に合わせた生長、生殖戦略を採用することで繁栄してきました。生殖戦略において大きな役割を担う生殖器官として、雄ずいと雌ずいが共存する「両性花」を形成しています。この「両性花」は、自分で確実に次世代を残すことができる自殖と同時に、他個体との交雑による遺伝的多様性の維持を可能とする他殖も行える仕組みも構築してきました。つまり、植物は進化のプロセスにおいて、生殖器官の構造や情報伝達を分子レベルで変化させることにより、「両性花」の自殖と他殖のバランスを調整し、種ごとに周囲の環境に適した生殖システムを確立しています。その結果として、他殖を促進する自家不和合性や雌雄異熟、また雌雄異株など多岐にわたる生殖システムが創出されています。こうしたことを踏まえて、植物の生殖システムのひとつである自家不和合性に焦点を当て、遺伝学的、生理学的観点から、植物の自殖と他殖を制御する分子メカニズムを明らかにし、植物の生殖戦略に対する学術的理解を深化させたいと思っています。
現在までの「アブラナ科植物の自家不和合性」に関する研究の中で見いだした興味深い機能分子(低分子ペプチド・受容体型キナーゼ・低分子RNAなど)は、植物の生長・分化・形態形成にも機能していることが示されつつあり、「環境適応」という動けない植物ならではの「応答」にも関連している、と我々は考えています。これらのメカニズムを生物情報工学・構造生物学・生化学・有機化学などの境界領域研究や、さらには、工学・社会科学・人文科学など今まで融合が難しかった領域との共同研究で明らかにし、自殖、他殖を可能にする「両性花の本質」、「アブラナ科植物の自家不和合性」、「植物の受粉反応」等の分子実態を明らかにし、こうした教育研究を通じて、領域横断的なコンセプトを持った人材育成を目指した研究室にしたいと思っています。
植物を材料として「生命」の基礎を理解し、さらには異分野融合研究を世界レベルで展開してみたいと思う方、ぜひ研究室に足を運んでください。今までとは、異なった「植物」像が見える研究室ですので。お待ちしております。
経歴
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H3・4 |
東北大学助手 農学部(採用) |
H8・6 |
大阪大学蛋白質研究所共同研究員(併任) |
H9・2 |
国立遺伝学研究所共同研究員(併任) |
H9・12 |
岩手大学助教授 農学部(昇任) |
H13・4 |
第11回日経BP技術賞大賞・受賞 |
H14・9 |
岡山大学資源生物科学研究所非常勤講師(併任) |
H14・11 |
第1回日本農学進歩賞・受賞 |
H17・4 |
東北大学大学院生命科学研究科教授(昇任) |
H17・4 |
岩手大学21世紀COEプログラム特任教授(併任) |
H19・6 |
東京大学理学部非常勤講師(併任) |
H21・4 |
鹿児島大学大学院理工学研究科非常勤講師(併任) |
H21・4 |
鹿児島県立錦江湾高等学校・SSH重点枠運営指導委員会委員(併任) |
H22・5 |
仙台市立七北田小学校・学校評議員(併任) |
H22・5 |
宮城県仙台第三高等学校・SSH運営指導委員会委員(併任) |
H21・3 |
第7回日本学術振興会賞・受賞 |
H23・4 |
香川県立観音寺第一高等学校・SSH運営指導委員会委員(併任) |
H23・4 |
岩手県立盛岡第三高等学校・SSH運営指導委員会委員(併任) |
H24・4 |
福島県立福島高等学校・SSH運営指導委員会委員(併任) |
H24・10 |
日本育種学会第122回講演会優秀発表賞・受賞 |
H25・3 |
東北大学総長教育賞・受賞(「科学者の卵養成講座」実施委員会) |
H25・4 |
科学技術分野(科学技術賞・理解増進部門)の文部科学大臣表彰 |
H26・3 |
平成25年度野依科学奨励賞・受賞 |
H26・9 |
三重大学大学院生物資源学研究科非常勤講師(併任) |
H27・6 |
名古屋大学大学院生命農学研究科非常勤講師(併任) |
H28・4 |
理化学研究所仁科加速器研究センター・客員研究員(併任) |
H28・4 |
仙台市立片平丁小学校・学校評議員(併任) |
H29・12 |
日本育種学会第132回講演会優秀発表賞・受賞 |
H30・1 |
東北大学全学教育貢献賞・受賞 |
H30・1 |
日本遺伝学会「遺伝学教育用語検討委員会」委員(併任) |
H30・3 |
東北大学総長教育賞・受賞 |
R2・5 |
東北芸術工科大学・非常勤講師(併任) |
R2・12 |
大阪教育大学・非常勤講師(併任) |
R3・3 |
東北大学全学教育貢献賞・受賞 |
R4・10 |
三菱みらい育成財団賞・受賞(「科学者の卵養成講座」実施委員会) |
R5・4 |
日本学術振興会 学術システム研究センター 主任研究員(併任) |
現在に至る
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著書・論文
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- Suzuki et al. (1999) Genomic organization of the S locus: Identification and characterization of genes in SLG/SRK region of an S9 haplotype of Brassica campestris (syn. rapa). Genetics 153: 391-400.
- Takasaki et al. (2000) SRK determines the S specificity of stigma in self-incompatible Brassica. Nature 403: 913-916.
- Takayama et al. (2000) The pollen determinant of self-incompatibility in Brassica campestris. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 1920-1925.
- Watanabe et al. (2000) Highly divergent sequences of the pollen self-incompatibility (S) gene in class-I S haplotypes of Brassica campestris (syn. rapa) L. FEBS Lett. 473: 139-144.
- Hatakeyama et al. (2001) The S receptor kinase gene determines dominance relationships in stigma expression of self-incompatibility in Brassica. Plant J. 26: 69-76.
- Takayama et al. (2001) Direct ligand-receptor complex interaction controls Brassica self-incompatibility. Nature 413: 534-538.
- Murase et al. (2004) A membrane-anchored protein kinase involved in Brassica self-incompatibility signaling. Science 303: 1516-1519.
- Endo et al. (2004) Identification and molecular characterization of novel anther-specific genes in japonica rice, Oryza sativa L. by using cDNA microarray. Genes Genet. Syst. 79: 213-226.
- Shiba et al. (2006) Dominance relationships between self-incompatibility alleles controlled by DNA methylation. Nature Genet., 38: 297-299.
- Tsuchimatsu et al. (2010) Evolution of self-compatibility in Arabidopsis by a mutation in the male specificity gene. Nature 464: 1342-1346.
- Tarutani et al. (2010) Trans-acting small RNA determines dominance relationships in Brassica self-incompatibility. Nature 466: 983-986.
- Watanabe et al. (2012) Molecular genetics, physiology and biology of self-incompatibility in Brassicaceae. Proc. Jpn. Acad. Ser. B. 88: 519-535.
- Osaka et al. (2013) Cell type-specific transcriptome of Brassicaceae stigmatic papilla cells from a combination of laser microdissection and RNA sequencing. Plant Cell Physiol. 54: 1894-1904. (Research Highlight selected, Cover Photo selected)
- Hiroi et al. (2013) Time-lapse imaging of self- and cross-pollination in Brassica rapa L. Annals Bot. 112: 115-122.
- Yasuda et al. (2016) Complex dominance hierarchy is controlled by polymorphism of small RNAs and their targets. Nature Plants 3: 16206.
- Takada et al. (2017) Duplicated pollen-pistil recognition loci control intraspecific unilateral incompatibility in Brassica rapa. Nature Plants, 3: 17096.
- 武田和哉, 渡辺正夫 (2019) 菜の花と人間の文化史--アブラナ科植物の栽培・利用と食文化--. 勉誠出版, pp240.
- Murase et al. (2020) Mechanism of self/nonself-discrimination in Brassica self-incompatibility. Nature Commun. 11: 4916.
- 牧野周, 渡辺正夫, 村井耕二, 榊原均 (2022) エッセンシャル 植物生理学-農学系のための基礎-. 講談社, pp271.
- Yew et al. (2023) Small RNA-regulated dominance among polyploid subgenomes supports Haldane's sieve in evolution of self-compatibility. Nature Commun. 14: 7618.
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所属学会
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日本育種学会、日本植物生理学会、日本遺伝学会、日本植物バイオテクノロジー学会、日本分子生物学会
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担当講義
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中級アカデミック・ライティング(全学部・1年次)、学問論演習(全学部・1年次)、分子化学生物学概論(大学院)、先端分子化学生物学特論II(大学院)、生態学合同講義(大学院)
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