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研究者の方

花粉管伸長関連遺伝子は、成熟花粉に転写産物として蓄積

花粉管伸長関連遺伝子は、成熟花粉に転写産物として蓄積

2010.12.03 15:45

「花粉・花粉管での転写産物の比較解析」の研究成果をGenes & Genetic Systemsに発表

花粉管伸長関連遺伝子は、成熟花粉に転写産物として蓄積

所属:生態システム生命科学専攻・植物生殖遺伝分野
名前:渡辺正夫
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/watanabe/

研究概容
 花粉は雄性配偶子であり、雌ずいの先端に付着したあとに、花粉管を伸ばし、受精に至ります。花粉という小さなものが、長い花粉管を伸ばすためには、様々な仕組みが必要でありますが、その実態は少しずつ解明されつつあります。一方、40年近い問題として、花粉管伸長時には遺伝子の転写が起きるのかということについては、様々な議論がありましたが、大方の議論の方向性としては、花粉管伸長時には、新規な転写は起きず、花粉管伸長に必要な転写産物は、花粉管発芽前の成熟花粉の中に貯蔵されていると、されていましたが、結論は得られてないのが、現状でした。そこで、本研究科・植物生殖遺伝分野・渡辺正夫教授と、大阪大学大学院理学研究科・石水博士らが共同研究を行い、花粉管伸長関連遺伝子は、成熟花粉に転写産物として、蓄積されていることを明らかにし、国際科学誌Genes Genet. Syst.に発表しました。

 配偶体型自家不和合性を示す、ナス科のペチュニアは、人工発芽培地上での花粉管発芽、花粉管伸長が容易です。そこで、ペチュニア成熟花粉、花粉管を研究材料として、カスタムcDNAマイクロアレイを作成し、両者のmRNAを調整し、成熟花粉、伸長中の花粉管での遺伝子発現・比較解析を行いました。その結果、両者の発現パターンに違いはなく、従来からいわれていた花粉管伸長関連遺伝子は、成熟花粉に転写産物として、蓄積されていることを示しました。今後は、どのようにして安定に成熟花粉で転写産物が貯蔵されているのかなど、残された問題を解決したいと思っております。

この研究は国際誌「Genes Genet. Syst.」 (http://www.jstage.jst.go.jp/article/ggs/85/4/85_259/_article)に、掲載されました。 Ishimizu, T., Kodama, H., Ando, T., and Watanabe, M. (2010) Molecular evidence that most RNAs required for germination and pollen tube growth are stored in the mature pollen grain in petunia. Genes Genet. Syst. 85: 259-263. (http://www.jstage.jst.go.jp/article/ggs/85/4/259/_pdf).

ペチュニアの花

私たちは、植物の生殖形質を遺伝学の手法を用いて、その分子機構を解明することを目標に、研究を行っております。主として研究しているのは、アブラナ科植物の自家不和合性の分子機構、花粉成熟に係わる分子メカニズム、低分子RNAの生殖形質への関連などです。
 そこで、こうした点を明らかにするために、遺伝学、植物学の基礎を持ち、分子生物学の素養を有した学生さんと一緒に研究できることを希望します。ぜひ、渡辺まで、ご連絡ください。