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産官学連携で推進する「黒部川流域ネイチャーポジティブ・プロジェクト」 環境省の公募事業「ランドスケープアプローチの実践事業」に採択 〜河川流域の企業や地域が連携する持続可能な新たなモデルの啓発へ 〜

産官学連携で推進する「黒部川流域ネイチャーポジティブ・プロジェクト」 環境省の公募事業「ランドスケープアプローチの実践事業」に採択 〜河川流域の企業や地域が連携する持続可能な新たなモデルの啓発へ 〜

2025.10.01 11:00

発表のポイント

  • 黒部川流域での活動が「黒部川流域ネイチャーポジティブ(注1)・プロジェクト」として環境省の公募事業「令和7年度ネイチャーポジティブ地域づくり支援モデル事業(通称:ランドスケープアプローチの実践事業)」に採択されました。
  • 「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」は、宮城県南三陸町、佐賀県唐津市、富山県黒部川流域をはじめ複数の地域で地域サイトのモデル事業を展開しており、本件は国際的に注目されているランドスケープアプローチを、日本の流域で具体化する先駆的な試みです。
 

概要

 
 東北大学大学院生命科学研究科の近藤倫生教授がプロジェクトリーダーを務める「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」(以下、NP拠点)の進める事業が、このたび環境省の公募事業「令和7年度ネイチャーポジティブ地域づくり支援モデル事業(通称:ランドスケープアプローチの実践事業)」に採択されました。
 NP拠点は、全国に先駆けてネイチャーポジティブに関する産官学連携のモデルケースを作る事業を進めています。その一環で取り組んでいる黒部川流域では、企業・行政・研究機関・地域団体など多様なステークホルダーが参画し、自然と社会が共生する持続可能な地域モデルの構築を目指しています。今回の採択を契機に、地域の価値創造に繋がるネイチャーポジティブな未来づくりの重要性を社会や関連業界に広く啓発していきます。
 
【詳細な説明】
■公募事業と採択されたNP拠点事業が手掛けるプロジェクトの概要
<環境省による公募事業の名称・概要>

令和7年度ネイチャーポジティブ地域づくり支援モデル事業
本事業は、企業がネイチャーポジティブ目標に貢献する取組を実施することが企業価値の向上につながり、かつ地域課題の解決等を通じて地域価値の向上にも寄与する「ネイチャーポジティブな地域づくり」のモデル創出を目的として、既存の計画やデータ等を踏まえて、地域の関係主体と連携し、ランドスケープアプローチの実践の具体化を支援するものです。(環境省Webサイトから抜粋)
<上記の公募事業に採択されたプロジェクト概要>

採択事業名 黒部川流域ネイチャーポジティブ・プロジェクト
連携体制名 黒部川ネイチャーポジティブ検討会
参画機関(順不同) 東北大学ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(東北大学や海洋研究開発機構等が参加)、富山県、黒部市、入善町、YKK(株)、アサヒグループジャパン(株)、マルハニチロ(株)、関西電力(株)、北陸電力(株)、(株)ほくほくフィナンシャルグループ、(株)熊谷組、八千代エンジニヤリング(株)、阿曽原温泉小屋、(一社)環境市民プラットフォームとやま、(一社)黒部川扇状地研究所等
事業概要 3,000m級の山岳から扇状地の里地里山、富山湾の里海、奥海へと続く黒部川流域において、水関連資源に依存し又は影響を与えている企業や自治体、地域団体などのステークホルダーが連携して、ネイチャーポジティブな地域づくりを実現するためのビジョンづくり、ロジックモデルを活用したアクションプランの検討等
参考情報 環境省による報道発表資料(公募結果について)
https://www.env.go.jp/press/press_00530.html
 
 
■今後の展開
 本プロジェクトは、NP拠点副拠点長の東北大学グリーン未来創造機構の藤田香教授がリーダーを務める産官学連携プラットフォーム「黒部川ネイチャーポジティブ検討会」(2025年4月発足)が中心となって、全国初の「流域ネイチャーポジティブ宣言」の実現を目指して進めている活動です。流域をネイチャーポジティブにするための合意形成、流域での研究調査、環境DNAを活用した市民参加型調査、自然の保全・再生活動、人材育成、資金メカニズムの開発など、黒部川流域の企業や地域が一体となって多様な活動を展開し、ネイチャーポジティブに貢献する持続可能な地域づくりに向けて取り組んでいます。
 こうした取り組みは、2024年10月に開催された生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)でも注目されたランドスケープアプローチを、日本の流域で具体化する先駆的な試みです。黒部川での経験を通じて、「ひとが入った自然」を評価する国際的な視点と、地域発のネイチャーポジティブなモデル創出の両面に貢献していきます。さらに今後は、他地域との連携や知見の共有を進め、日本発のネイチャーポジティブな取り組みを世界に発信していくことを目指します。
 
図1. 「やすらぎ水路」の視察風景(黒部川流域)
 
■参考情報
NP拠点

自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」の理念に基づき、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体、市民等を巻き込んだ包括的なアプローチで、国際的な社会変革をリードする拠点です。自然の高度な科学的理解に基づく自然の価値の可視化、ネイチャーポジティブに資する基礎・応用研究の促進、自然資本への資金の流れの加速および産業の創出、社会のシステムや制度設計への貢献、専門知識を備え地域で活躍する人材の育成や起業促進等を、一体的かつ効率的に展開しています。アンダーワンルーフのもと業種や国境を超えた連携・共創を促進し、国際課題であると同時に地域創生の鍵でもあるネイチャーポジティブ実現を支えるハブとなることを目指しています。宮城県南三陸町、佐賀県唐津市、富山県黒部川流域をはじめ複数の地域で地域サイトのモデル事業を展開しています。
(ウェブサイト https://www.naturepositive-hub.jp/
 
黒部川ネイチャーポジティブ検討会
「黒部川ネイチャーポジティブ検討会」は、2025年4月に発足した、富山県・黒部川流域をフィールドとした産官学連携プラットフォームです。黒部川流域に関わる自治体、企業、研究機関、NGO、地域団体など、15以上の企業や団体による多彩なステークホルダーが参画し、流域の自然・生物多様性を保全・再生することでネイチャーポジティブを推進し、地域価値向上に結びつけることを目的としています。さらに、全国で初となる「流域ネイチャーポジティブ宣言」の表明も目指しています。
 
図2.「黒部川ネイチャーポジティブ検討会」第2回勉強会の様子(黒部市芸術創造センター)
 
「黒部川ネイチャーポジティブ検討会」第2回勉強会の概要
(2025年7月1日〜7月2日、富山県黒部市・入善町で開催)
https://note.com/naturepositive/n/n3dcf61604d53 
 
【用語説明】
注1. ネイチャーポジティブ:”2020年を基準として、2030年までに自然の喪失を回復基調に逆転させ、2050年までに完全な回復を達成する”という世界的な社会目標。2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において新たに設定された。
 
 
 
【問い合わせ先】
(内容について)
東北大学ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点 広報事務局:上田 羊介
TEL: 022-795-6688
Email: yosuke.ueda.c1(at)tohoku.ac.jp 
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp 
 
 
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