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つる植物が支柱をよじ登るために必要な遺伝子の発見(米科学アカデミー紀要 12月9日号)

つる植物が支柱をよじ登るために必要な遺伝子の発見(米科学アカデミー紀要 12月9日号)

2005.12.01 17:12

つる植物がよじ登るための回旋運動に重力感受細胞を必要とすることが分かりました

研究タイトル つる植物が支柱をよじ登るために必要な遺伝子の発見

所属:生態システム生命科学専攻 宇宙環境適応生態分野
名前:北澤大典・藤井伸治宮沢豊高橋秀幸
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/tekio/index.htm
E-mail: hideyuki*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

 園芸植物として日本人に馴染み深いアサガオは、代表的な蔓性植物で、支柱に巻き付き、よじ登りながら成長します。植物のよじ登りという運動成長に対して、進化論で有名なダーウィン父子は、茎が重力を感知して上へ伸びること(重力屈性という)と、蔓の先端が回転すること(回旋運動という)の重要性を1880年に指摘しています。しかしながら、今日に至るまでその証拠や仕組みは未解明でした。今回私たちは、日本に古くから伝わるアサガオ突然変異体「枝垂れアサガオ」に着目して解析した結果、その「枝垂れ」の原因となる遺伝子の変異を発見し、アサガオのよじ登りに必要な回旋運動と重力応答の関係を明らかにしました。
 枝垂れアサガオは、重力感知に必要な重力感受細胞を正常に分化させることができず、それが原因で重力屈性と回旋運動を示すことができません。モデル植物であるシロイヌナズナにおける重力感受細胞分化異常を示す突然変異体(scr)の研究から、この重力感受細胞の正常な分化にはSCRというタンパク質が必要であることが知られており、私たちは枝垂れアサガオのSCRタンパク質内に正常なアサガオのSCRタンパク質にはない1アミノ酸の挿入という異常を見いだしました。さらに、正常アサガオ型SCRタンパク質はシロイヌナズナscrにおける重力感受細胞分化、重力屈性、回旋運動を回復させた一方で、枝垂れ型SCRタンパク質はそれらすべてを回復させることができませんでした。このことは、アサガオSCR遺伝子がアサガオの重力感受細胞の分化に必要であることを示していると同時に、その遺伝子の変異により枝垂れアサガオが重力屈性と回旋運動を正常に発現できず、その結果として枝垂れてしまうことを示しています。本研究成果は重力感受細胞がアサガオのよじ登りの原動力である回旋運動に必須であることをはじめて直接的に示したもので、12月9日付の米科学アカデミー紀要電子版に掲載されました。
Kitazawa, D., Hatakeda, Y., Kamada, M., Fujii, N., Miyazawa, Y., Hoshino, A., Iida, S., Fukaki, H., Morita, M.T., Tasaka, M., Suge, H. and Takahashi, H. (2005) Shoot circumnutation and winding movements require gravisensing cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (DOI) 10.1073/pnas.0504617102

日本では馴染みの深い、蔓性植物のアサガオ。左が正常アサガオ、右が枝垂れアサガオを示しています。枝垂れアサガオは支柱をよじ登ることができません。矢印(g)は重力方向を表しています。

詳細についてはこちらのホームページをご覧下さい。
宇宙環境適応生態分野: http://www.ige.tohoku.ac.jp/tekio/index.htm

本論文はオープンアクセスになっていますので、米科学アカデミー紀要のweb siteからダウンロードできます。