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黄色植物の青色光センサーを世界で初めて発見

黄色植物の青色光センサーを世界で初めて発見

2007.11.01 18:19

黄色植物の青色光センサーを世界で初めて発見!
オーレオクロムと命名

所属:分子生命科学専攻 分子応答制御分野
名前:高橋文雄、山形大輔、石川美恵、片岡 博尚
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/outou/outou-j/kataoka-j.html

 黄色植物は地球上の物質生産の大半を担うが、その生理や生態の研究は陸上植物に比べ、非常に少ない。今回、片岡准教授のグループは黄色植物(不等毛類,光合成をするストラメノパイル)に属するフシナシミドロの光形態形成反応を起こす青色光受容体を発見した。
 フシナシミドロ(Vaucheria)は海から湿った土の上まで広く分布している藻類で,その体は、まばらに分岐する一個の糸状の多核細胞からなる。東北大学の植物園でも早春から初夏にかけて湿った崖に張り付くように生育しているのがみられる。片岡準教授は30年前(1975)フシナシミドロの正負の光屈性の解析をはじめたころ、その多核の細胞の一部に青色光を照射すると、照射域の中央に新しい成長点が誘導されることを発見している。高橋文雄(遺伝生態研究センターで学位所得)らはこの分枝誘導,すなわち、青色光形態形成反応の細胞機構を研究し、照射域に葉緑体と核が集合することが、分枝誘導に必須であることを報告している(2001)。
 今回、高橋文雄(研究支援者),石川美恵(修士課程2年)、片岡准教授たちは、フシナシミドロから青色光感受ドメインLOVと転写因子bZIPドメインをもつ新しいタイプの光受容体遺伝子2個を発見した。そのうちの一つのタンパクは青色光を吸収するとbZIPドメインDNAの標的配列TGACGTと結合することから、青色光で活性化する転写因子であることがわかった。さらに、それらタンパクの2本鎖mRNAをフシナシミドロに注射することにより、6ヶ月以上RNA干渉が持続し、青色光による分枝誘導が阻害されることから、この光受容体は光形態形成反応の受容体であることが確認された。
 この受容体のオルソログは、褐藻やケイ藻などの他の黄色植物にも存在するが、陸上植物を含む緑色植物には含まれない。逆に、緑色植物の青色光反応の受容体ホトトロピンは黄色植物には存在しない。そこで、この黄色植物独特の青色光受容体をオーレオクロム(AUREO1とAUREO2)と名づけた。フシナシミドロではAUREO1は青色光に反応して突起を出すための受容体、Aureo2は発生した突起が有性生殖器官になることを抑制するスイッチとして働いている可能性がある。他の黄色植物では青色光反応の研究が不足しているため、オーレオクロムがどのような機能を持っているのか全く不明である。 
 黄色植物は緑色植物とは系統が大きく異なる。緑色植物の葉緑体は原核生物であるラン藻(シアノバクテリア)に由来するのに対し、黄色植物の葉緑体は真核生物である単細胞の紅藻が別の真核生物にとりこまれてできた(二次細胞内共生という)と考えられている。黄色植物は青色光しか”見る”ことができないことや、深い海の底へは青い光しか届かないことを考えると、オーレオクロムの発見は黄色植物の生物学に大きなインパクトを与えることが期待できる。オーレオクロムの研究は、基礎生物学だけでなく、コンブやワカメの育種に役立つかもしれない。また、ケイ藻の生育を促進して大気の炭酸ガス吸収を増やしたり、赤潮を起こす藻類を防除したり、さらには、任意の遺伝子の発現を青色光でON/OFFできるナノマシンが開発できるかも知れない。黄色植物は地球上で最大の生産量を誇っている。海に囲まれた日本が黄色植物の研究を主導したいものである。

詳細資料は下記PDFファイルを参照ください。
資料 (680Kb)

本研究成果は11月14日付けの米科学アカデミー紀要(PNAS)電子版に掲載された。
また、これに先立ち、11月6日にReuter社から世界中の新聞・TV・ネットニュースに配信され、国内では河北新報,日刊工業新聞、などに掲載された。また、11月7日夕方には東日本放送スーパーJチャンネル宮城版で放映された。
印刷版は12月4日に発行された。さらに、2008年1月2日にはPNAS 電子版にAba Losiと Wolfgang Gartnerによるcommentaryが掲載された。

Takahashi F, Yamagata D, Ishikawa M, Fukamatsu Y, Ogura Y, Kasahara M, Kiyosue T, Kikuyama M, Wada M, Kataoka H (2007) AUREOCHROME, a photoreceptor required for photomorphogenesis in stramenopiles. Proc Natl. Acad. Sci. USA, Dec. 4, 2007, vol. 104 (no. 49): 19625 -19630.
Reprint: http://www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0707692104
Supporting Information: http://www.pnas.org/cgi/content/full/0707692104/DC1
Commentary: Aba Losi & Wolfgang Gartner, “Shedding (blue) light on algal gene expression”,
http://www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0710523105