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アスパラガスの全ゲノム構造を解明 アスパラガスの性決定遺伝子が明らかに

アスパラガスの全ゲノム構造を解明 アスパラガスの性決定遺伝子が明らかに

2017.11.06 09:43

発表のポイント

  • 重要な農作物の1つであるアスパラガスの全ゲノム構造を明らかにした。
  • アスパラガスは個体によって雌雄が分かれている雌雄異株植物で、性染色体によって性が決まっている(雄XY型、雌XX型)。本研究により、おしべ形成の促進に関わる遺伝子とめしべ形成の抑制に関わる遺伝子がアスパラガスの性決定遺伝子であることが明らかとなった。
  • 本研究成果は植物の雌雄性がどのように進化してきたかを解明するための大きな一歩となるだけでなく、アスパラガス品種の育成に大きく貢献することが期待される。
 

概要 

 東北大学大学院生命科学研究科の菅野明准教授は、米国・ジョージア大学(A. ハーケス博士、J. レーベンスマック教授)、オランダ・リムグループ(R. ファン デア フルスト博士、P. ラブリーセン博士)、中国・南昌野菜花き研究所(C.ガンギュ博士)をはじめとする23の大学・研究機関で構成される国際共同研究に日本で唯一の機関として参加し、アスパラガスの全ゲノム構造を解明しました。
 アスパラガスは1対の性染色体によって性が決まっており(雄:XY型、雌:XX型)、個体によって雌雄が分かれている雌雄異株植物です。遺伝学的な解析からアスパラガスの雌雄性はY染色体上の1遺伝子座*1によって決まっていることが分かっていました。本研究により、アスパラガスの性決定遺伝子座の構造が明らかとなり、おしべ形成の促進に関わる遺伝子(TDF1注)とめしべ形成の抑制に関わる遺伝子(SOFF)がアスパラガスの性決定遺伝子であることが解明されました(図)。
 本研究は、植物の雌雄性がどのように進化してきたかを解明する上で非常に重要な研究であるだけでなく、アスパラガスは重要な農作物の1つであることから、アスパラガス品種の育成に大きく貢献することが期待されます。
 本研究成果は、2017年11月2日付で国際科学雑誌Nature Communications電子版に掲載されました。
 
【用語説明】
*1 遺伝子座:遺伝子が染色体上で占める位置のこと。遺伝学的な方法で決定されるため、アスパラガスの性決定遺伝子座のように、1遺伝子座に複数の遺伝子が座乗している場合もある。
 
 

図 アスパラガスにおける性決定の分子機構。
雄株はY染色体上におしべ発達促進に関わるMSE1/TDF1遺伝子とめしべ発達抑制に関わるSOFF遺伝子がある。アスパラガスの花芽発達初期の段階では両性花と同じくおしべとめしべを持っているが、雄株では2つの性決定遺伝子が働くことでおしべが大きくなりめしべは発達が抑制されて「雄花」が形成される。雌株では2つの性決定遺伝子がないため、めしべの発達が抑制されずに大きくなる一方、おしべ形成が途中で止まるために「雌花」が形成される。

 

 
【論文の詳細】
 
表題:The asparagus genome sheds light on the origin and evolution of a young Y chromosome.
 
著者:Alex Harkess, Jinsong Zhou, Chunyan Xu, John E. Bowers, Ron Van der Hulst, Saravanaraj Ayyampalayam, Francesco Mercati, Paolo Riccardi, Michael R. McKain, Atul Kakrana,  Haibao Tang, Jeremy Ray, John Groenendijk, Siwaret Arikit, Sandra M. Mathioni, Mayumi Nakano, Hongyan Shan, Alexa Telgmann-Rauber, Akira Kanno, Zhen Yue, Haixin Chen, Wenqi Li, Yanling Chen, Xiangyang Xu, Yueping Zhang, Shaochun Luo, Helong Chen, Jianming Gao, Zichao Mao, J. Chris Pires, Meizhong Luo, Dave Kudrna, Rod A. Wing, Blake C. Meyers, Kexian Yi, Hongzhi Kong, Pierre Lavrijsen, Francesco Sunseri, Agostino Falavigna, Yin Ye, James H. Leebens-Mack, Guangyu Chen
 
雑誌:Nature Communications
 
 
 
 
参考
 
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 菅野 明(かんの あきら)
電話番号:026-217-5725
Eメール:kanno*ige.tohokuac.jp(*を@に置き換えてください)
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)