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植物の「かたち」のなぜ:競争に勝つためには、葉身を広げたほうがよいのか、葉柄を伸ばしたほうがいいのか?

植物の「かたち」のなぜ:競争に勝つためには、葉身を広げたほうがよいのか、葉柄を伸ばしたほうがいいのか?

2018.01.25 00:00

発表のポイント  

  • 植物の3次元構造をコンピューター内に再現し、バーチャルな競争実験を行った
  • 現実の植物ではあり得ないような形態の植物をつくりだすことにより、どのような形態をもつと受光量や光合成量がどうなるのかを調べることができる
  • 解析の結果、現実の植物は競争において有利なかたちを実現していることが明らかとなった
  • 現実の植物のかたち以外にも有利なかたちが存在し、これが植物のかたちが多様である理由の1つであると考えられる
 

概要  

 東北大学大学院生命科学研究科機能生態学分野の彦坂幸毅教授らのグループは、どのような「かたち」が植物の競争に有利なのかを研究しました。現実の植物をもとに3次元構造をコンピューター内に再現し(図B)、さらに、個体間で競争させ、各個体の受光量や光合成量を推定しました(図D)。また、現実の植物と少しかたちが違う植物をつくり、かたちが変わることによって受光量や光合成量がどのように変化するかを調べました。具体的には、現実の植物よりも葉身が大きいが葉柄が短い植物(図A)、現実の植物よりも葉柄が長いが葉身が短い植物(図C)を調べました。さらに、経済学でよく使われる「ゲーム理論」を適用し、競争条件でどのようなかたちが有利なのかを考察しました。解析の結果、競争していない条件に比べ、競争している条件では、多少葉身が小さくても、葉柄が長いほうが競争に有利であることがわかりました。また、現実の植物は競争において有利なかたちを実現していることがわかりました。一方で、現実の植物とは大きく違うかたちをもつ植物も有利になることがあり、これは植物のかたちが多様である理由の一つであると考えられます。本研究の成果は、植物の多様性の理解に貢献するとともに、さらに発展させることによって、生産性が高い植物の育出に貢献することが期待されます。本研究成果は、Annals of Botany誌に掲載されました。
  
 
 
 
図 植物競争のシミュレーション。現実のオオオナモミ個体をもとに再現した3次元構造(B)と、その葉の葉身を大きくして葉柄を短くした個体(A)、葉柄を長くして葉身を小さくした個体(C)。個体群(D)にして受光量・光合成量を計算した。
 
 
【論文の詳細】
 
表題:The role of biomass allocation between lamina and petioles in a game of light competition in a dense stand of an annual plant
 
著者:Kenta Yoshinaka, Hisae Nagashima, Yusuke Yanagita, Kouki Hikosaka
 
雑誌:Annals of Botany
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 彦坂 幸毅(ひこさか こうき)
電話番号:022-795-7735
E メール:hikosaka*m.tohokuac.jp(*を@に置き換えてください)