GO TOP

最新情報

最新情報

楽天家のハエ ドーパミンシナプスの制御による報酬効果の調節

楽天家のハエ ドーパミンシナプスの制御による報酬効果の調節

2021.07.14 11:00

発表のポイント

  • 楽天主義は、好き・嫌いを左右する考え方の「癖」ですが、そのしくみはよく分かっていません
  • ショウジョウバエの脳内ドーパミンにかかる抑制制御を人工的に操作すると、報酬の効果が増大することを発見しました
  • このハエはより多くの報酬を得たように振る舞うことから、「楽天的」ととらえることができ、このような気質を生む脳の機構を解明する糸口となります
     

概要

 楽天主義は、物事の先行きを良い方向に捉える脳の「癖」と言い換えることが可能です。これまでの研究により、楽天主義には脳の報酬系、特に神経伝達物質ドーパミンのはたらきが関わっていることが知られていますが、その制御のしくみについてはわかっていませんでした。
 東北大学大学院生命科学研究科の山方恒宏准教授、谷本拓教授らのグループは、ショウジョウバエを用い、脳内のドーパミン細胞の一部(放出箇所)が抑制性の神経伝達物質GABAにより局所的に制御され、この制御が認知バイアスを調節していることを発見しました。GABAによる抑制制御を人工的に解除したショウジョウバエでは、同じ報酬でも強い記憶が形成され、楽天的に行動する様子が観察されました。このことは、楽天的な「個性」がわずか1μmにも満たない微細な脳構造の機能変化によって決定されていることを示しています。本成果は、ヒトを含むさまざまな動物種の行動にも共通する仕組みであると考えられ、進化の段階で獲得され、引き継がれてきた普遍的な脳の機能だと思われます。本研究成果は、6月1日eLife誌(電子版)に掲載されました。

  

 

図:(上)ドーパミンプレシナプスにおけるシナプス活動センターの発現(中、下)GABA受容体によるドーパミンシナプス匂い反応の強度制御(中)および空間制御(下)
 
 
 
【論文情報】
題目:Presynaptic inhibition of dopamine neurons controls optimistic bias

著者:Nobuhiro Yamagata, Takahiro Ezaki, Takahiro Takahashi, Hongyang Wu, Hiromu Tanimoto
筆頭著者情報:(氏名、所属):山方 恒宏、東北大学生命科学研究科

雑誌:eLife

Volume Page: Jun 1;10:e64907
DOI: 10.7554/eLife.64907

 
 
 
【お問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科 
担当 山方 恒宏(やまがた のぶひろ)
TEL: 022-217-6224
E-mail: nobuhiro.yamagata.a5@tohoku.ac.jp
 
担当 谷本 拓(たにもと ひろむ)
TEL:022-217-6223
E-mail: hiromut@m.tohoku.ac.jp
 
【報道に関すること】
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
Tel: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp