概要
美容室向けヘア化粧品メーカーの株式会社ミルボン(本社:東京都中央区 代表取締役社長・佐藤龍二)は、東北大学の福田光則教授に技術顧問として参画を依頼し、3451名の女性の髪について研究を行ったところ、加齢により生じる白髪化にはメラニン色素の輸送異常が関与していることを新たに解明しました。
研究の背景
毛髪が生える土台である頭皮を健康に保つことは、美しい毛髪を生やすためや維持するために重要です。これまで、ミルボンでは頭皮の赤み(頭皮の慢性炎症)が増えることが、白髪の増加に繋がることを捉えていました。
https://www.milbon.co.jp/files/pdf/news/2021/05/20210520103159_1.pdf
白髪化の発生要因としては、メラニン色素を作り出す細胞のもととなる色素幹細胞の消失や、メラニン色素を作り出す段階の異常が報告されています。しかしこれらは完全に色素を失った白髪を調査対象としており、黒髪から白髪へと移行していく過程については研究報告があまりありませんでした。完全な白髪に移行する前の初期段階で起こる現象を明らかにできれば、効果的な早期対処方法を見出して白髪化を食い止められると考え、研究を行いました。
https://www.milbon.co.jp/files/pdf/news/2021/05/20210520103159_1.pdf
白髪化の発生要因としては、メラニン色素を作り出す細胞のもととなる色素幹細胞の消失や、メラニン色素を作り出す段階の異常が報告されています。しかしこれらは完全に色素を失った白髪を調査対象としており、黒髪から白髪へと移行していく過程については研究報告があまりありませんでした。完全な白髪に移行する前の初期段階で起こる現象を明らかにできれば、効果的な早期対処方法を見出して白髪化を食い止められると考え、研究を行いました。
研究の成果
20代から70代までの3451名のさまざまな女性の白髪を調査する中で、従来報告されていた「完全に色素を失った白髪」とは異なり、「色素は作られているのに黒髪にはなれない白髪」を発見しました(以後不完全な白髪と仮称)(図1)。この不完全な白髪は、まだ白髪が出現し始めて時間が経っていない白髪率が低い人に多く観察されました。
毛根には、細胞分裂を繰り返して、毛髪となる細胞(毛母細胞)とメラニン色素を作り出す細胞(メラノサイト)が別々に存在しています。そのため、メラノサイトでつくられたメラニン色素が毛母細胞に輸送されることではじめて毛髪が黒く色づきます。このことから、不完全な白髪では、メラニン色素の毛母細胞への輸送に異常が生じているのではないかと考え、細胞間輸送の権威である東北大学の福田光則教授のアドバイスを受けて、不完全な白髪のメラニン色素の合成や輸送にかかわる遺伝子の発現状態を調べました。
毛根には、細胞分裂を繰り返して、毛髪となる細胞(毛母細胞)とメラニン色素を作り出す細胞(メラノサイト)が別々に存在しています。そのため、メラノサイトでつくられたメラニン色素が毛母細胞に輸送されることではじめて毛髪が黒く色づきます。このことから、不完全な白髪では、メラニン色素の毛母細胞への輸送に異常が生じているのではないかと考え、細胞間輸送の権威である東北大学の福田光則教授のアドバイスを受けて、不完全な白髪のメラニン色素の合成や輸送にかかわる遺伝子の発現状態を調べました。
図1 毛根部に色素を持つ不完全な白髪
赤丸部分:白髪の毛根部にアメーバのような形状の色素を作り出す細胞(メラノサイト)が確認できる。
赤丸部分:白髪の毛根部にアメーバのような形状の色素を作り出す細胞(メラノサイト)が確認できる。
不完全な白髪を黒髪と比較すると、メラニン色素を作り出す遺伝子の発現量は低下していなかったものの、メラニン色素を輸送する遺伝子の1つであるメラノフィリン(Slac2-aとも呼ばれる)の発現量が有意に低下していることが確認できました。この結果から、不完全な白髪はメラニン色素の輸送異常により起こっていることが示唆されました。