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東北大学大学院生命科学研究科と唐津市が ネイチャーポジティブの実現に向けて連携協定を締結 ~環境DNA調査等を活用し、人と自然が育み合う社会を実現~

東北大学大学院生命科学研究科と唐津市が ネイチャーポジティブの実現に向けて連携協定を締結 ~環境DNA調査等を活用し、人と自然が育み合う社会を実現~

2025.07.22 11:00

概要

 東北大学大学院生命科学研究科と唐津市は、地域のネイチャーポジティブ(注1)の実現に向けて、連携協定を2025 年7 月17 日に締結し、同日締結式を実施しました。本協定は、多様な自然環境と景勝に恵まれた里海や、歴史・文化と深く結びついた里山・里地の自然資本を守り活かしながら、自然と調和した地域づくりと持続可能な経済社会のモデル構築を目的としています。
 本協定はネイチャーポジティブの実現に向けて以下の事項について協力して参ります。

(1)里地・里山・里海の価値の再認識と持続的な利活用
(2)地域における生物多様性の保全や増進活動の促進
(3)生物多様性や自然資本の価値に関する情報発信やサービス・ノウハウ等の共有
(4)自然資本を活用した新たな事業化やビジネスマッチング、ビジネスモデルの創出促進
(5)両者が有する知的資源、人的資源及び物的資源の活用
(6)その他、本協定の目的に資すると双方が認める事項

 
図1. 調印式の様子 ボードを持ったフォトセッションの写真
左から、近藤倫生教授、東北大学大学院生命科学研究科の彦坂幸毅研究科長、唐津市の峰達郎市長、脇山秀明副市長
 
 
 
 
【詳細な説明】
契約締結の背景
 2025年3月、唐津市が主催した「Nature Positive Forum 九州 #1 KARATSU」では、同市が「ネイチャーポジティブ宣言」を表明し、地域として自然と共生する社会の実現を目指す強い意思を示しました。本フォーラムには、東北大学ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(以下NP拠点)も共催として参加し、地域と学術機関が連携してネイチャーポジティブな社会を目指して協働する重要性が確認されました。こうした経緯を踏まえ、両者は本協定により連携をさらに強化し、科学的知見と地域の実践を結びつけながら、地域の自然資本を活かした持続可能な社会の構築に向けて、協働して取り組んでまいります。
 
東北大学大学院生命科学研究科のネイチャーポジティブに対する取組
ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点
 東北大学大学院生命科学研究科(兼東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC))の近藤倫生教授がプロジェクトリーダーを務めるネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(以下NP拠点)は、自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」の理念に基づき、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体、市民等を巻き込んだ包括的なアプローチで、国際的な社会変革をリードし、自然の高度な科学的理解に基づく自然の価値の可視化、ネイチャーポジティブに資する基礎・応用研究の促進、自然資本への資金の流れの加速および産業の創出、社会のシステムや制度設計への貢献、専門知識を備え地域で活躍する人材の育成や起業促進等を、一体的かつ効率的に展開しています。アンダーワンルーフのもと業種や国境を超えた連携・共創を促進し、国際課題であると同時に地域創生の鍵でもあるネイチャーポジティブ実現を支えるハブとして自立しています。
 本拠点は2022年度より社会課題解決をリードする産官学連携拠点の構築を目指すCOI-NEXTプログラムに採択されています。
ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点:
https://www.naturepositive-hub.jp/
 
唐津市のネイチャーポジティブに対する取組
 2025年3月に市内で開催した「Nature Positive Forum九州 #1 KARATSU」で、唐津市長が「唐津市ネイチャーポジティブ宣言」を行い、ネイチャーポジティブの実現に向けた行動目標を表明しました。ネイチャーポジティブ宣言は、佐賀県内自治体で初の取り組みです。
 
地域循環共生圏は、自然景観などの地域資源を活用しながら、自立・分散型の持続可能な社会を目指す考え方です。唐津市は豊かな地域資源を生かし、2024年度から環境省の認定を受け、持続可能な社会の実現を目指しています。
 
 
今後の展開
 本協定に基づき、今後は唐津市内で既に始まっているネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みを、科学的な視点を取り入れながらさらに発展させていきます。昨年度、唐津市内では環境DNA(注2)を用いた生物多様性のプレ調査も実施されており、今後の科学的知見に基づく保全施策や事業展開の基盤づくりが進められています。
 その一例として、唐津市の漁業者である袈裟丸水産が進めている、持続可能な水産業を目指した藻場造成の取り組みがあります。地域の海洋環境を回復・保全しつつ、海の豊かさを次世代へつなぐことを目指して活動しています。今後は、このような現場での実践的な取り組みに対して、東北大学NP拠点の知見を活かし、環境DNAなどを用いた生物相調査や科学的モニタリングの導入を検討しています。 
 こうした連携により、地域で実践されるネイチャーポジティブな活動の効果の“見える化”を目指し、持続可能性を高めるとともに、他地域への展開も視野に入れた先進的なモデルケースの創出を目指します。
 
 
<東北大学NP拠点長によるコメント>
唐津市の豊かな自然と、未来を見据えたまちづくりの取り組みにご一緒できることを、大変嬉しく思います。私たちNP拠点は、環境DNAなどの先端技術に加え、教育や人材育成の取り組みを通じて、地域の皆さんと共に、自然と人が調和する社会の実現を目指しています。科学だけでなく、人と人のつながりを大切にしながら、唐津市とともに、全国に発信できるような先進的なネイチャーポジティブのモデルを築いていきたいと考えています。
 
NP拠点長
東北大学大学院生命科学研究科
変動海洋エコシステム高等研究所
近藤倫生 教授
 
 
<唐津市 峰達郎 市長によるコメント>
東北大学大学院生命科学研究科との連携協定を通じて、科学的根拠に基づくネイチャーポジティブな地域づくりの新たな一歩を踏み出します。環境DNA を活用した自然資本の見える化やネイチャーポジティブ人材の育成により、行政・研究機関・市民の知見が深化し、持続可能な共生社会をともに創出していきます。大学と地域が手を取り合い、学術と実践を融合させることで、唐津から全国に広がるモデルを構築していきます。
 
 
 
図2. 唐津市地元業業者の方とNP拠点メンバーの様子
NP拠点の太齋ターゲットリーダー(写真右)が袈裟丸水産の袈裟丸氏(写真左)から藻場造成に関する説明を受ける様子

 
 
 
【用語説明】
注1.    ネイチャーポジティブ:”2020年を基準として、2030年までに自然の喪失を回復基調に逆転させ、2050年までに完全な回復を達成する”という世界的な社会目標
注2.    環境DNA:水中や土壌中など環境中に存在する生物由来のDNA(デオキシリボ核酸)を指す。生物はフンや粘液などと一緒に自らのDNAの痕跡を環境中に残す。野外で採取した水や土壌などから生物由来DNAを抽出、分析することでそこに住む生物の種類を知る技術(環境DNA技術)が近年になって大きく発展した。捕獲や直接観察に頼る従来の生物調査法に比べて、調査現場での作業が圧倒的に少ないことから、従来の調査法では容易ではなかった多地点、高頻度での生物調査を実現する画期的な方法として注目されている。
 
 
 
 
関連リンク
 
 
【問い合わせ先】
(協定に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科総務係
Email: lif-soumu(at)grp.tohoku.ac.jp
 
(NP拠点に関すること)
東北大学ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点 広報事務局:上田 羊介
TEL: 022-795-6688
Email: yosuke.ueda.c1(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp