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植物のストレス反応スイッチの受容体を狙い撃ち制御-二面性をもつ分子による新戦略-

植物のストレス反応スイッチの受容体を狙い撃ち制御-二面性をもつ分子による新戦略-

2026.01.15 14:00

発表のポイント

  • 植物ホルモン「ジャスモン酸」の受容体に対して、特定のものだけを狙い撃ちできる「反応性アンタゴニスト(Reactive Antagonist, 以下RA)(注1)戦略」を開発しました。
  • RA戦略により、これまで数が多くて役割が重なり合い、見分けにくかった受容体1種類ごとの働きを、選択的に読み出すことが可能になります。
  • 植物の防御・成長バランスの精密制御や、新しい分子グルー(molecular glue)(注2)・分解誘導薬(注3)の設計など、農業・創薬の両分野への応用が期待されます。
 

概要

 植物ホルモンの一つであるジャスモン酸は、虫に食べられたり病原菌に感染したりしたときに働き、植物の防御反応を起動させるホルモンです(図1)。その他にも、乾燥や塩害、病原菌の感染、昆虫の食害といったストレスに対する防御反応や、花を咲かせるタイミング、背丈や根の伸び方など、成長や環境への適応をコントロールする「スイッチ」の役割を担っています。
 東北大学大学院理学研究科(兼 生命科学研究科) 上田実教授、松本幸太郎大学院生の研究グループは、北海道大学大学院薬学研究院 前仲勝実教授、野村尚生特任講師、スペイン国立生物工学センターとの共同研究で、植物ホルモン・ジャスモン酸を受容するCOI1–JAZ複合体をモデルとして、標的とするJAZタンパク質(注4)をピンポイントで選び出す反応性アンタゴニスト(RA)戦略を開発しました。
 RAは、標的JAZにあらかじめ組み込んだシステイン残基(注5)と共有結合することで、そのJAZだけに作用してホルモン応答を引き起こす一方、標的以外のJAZによるホルモン応答を抑えます。この「ジキルとハイド」のように二面性をもつ性質を利用し、13種類あるJAZのうち、任意の1種類だけの機能を選択的にONにすることに成功しました。
 本成果は、「似たタンパク質がたくさんあって一つ一つの役割が分かりにくい」という生命科学共通の問題を解決する新しい技術として、幅広い応用が期待されます。
 本研究成果は、1月8日(英国標準時)に科学誌、Advanced Scienceのオンライン版に掲載されました。
 
図1. 「ジャスモン酸(JA-Ile)」の、COI1-JAZ受容体は13種
 
 
図2.  RA分子は「ジキルとハイド」のような制御分子
 
 
【用語説明】
注1.    反応性アンタゴニスト(Reactive Antagonist, RA):受容体に対してはアンタゴニスト(阻害剤)として結合しつつ、標的タンパク質に導入した反応性アミノ酸残基(本研究ではシステイン)と共有結合できるよう設計された化合物。これにより、標的タンパク質だけを分解に導く「分子グルー」として働かせることができる。本研究では、ジャスモン酸受容体COI1–JAZをモデルに、特定のJAZだけを選択的に分解させるRAを開発した。
注2.    分子グルー(molecular glue):本来は弱い、あるいはほとんど起こらないタンパク質同士の結合を、低分子化合物が“のり”のように仲立ちすることで強める分子。ユビキチンリガーゼと標的タンパク質を近づけて分解を促す医薬品や、植物ホルモンが受容体タンパク質同士を結びつける仕組みなどが代表例。
注3.    分解誘導薬:細胞内に存在するタンパク質の分解を誘導する薬物。例えば、遺伝子発現を抑制するJAZタンパク質が分解されることで、遺伝子発現のスイッチをオンにする。
注4.    JAZタンパク質:植物ホルモンによって誘導される遺伝子発現を抑制するタンパク質。
注5.    システイン残基:アミノ酸残基システインはRA分子の反応性部位と反応しやすいチオール基(-SH)をもつ。
 
 
【論文情報】
タイトル:A Reactive Antagonist Strategy: Cysteine-directed Covalent Molecular Glue in Plant Hormone Receptor Regulation
著者: Minoru Ueda*, Kotaro Matsumoto, Takao Nomura, Yousuke Takaoka, Taichi Okumura, Wataru Kozaki, Hikaru Hoshikawa, Yuho Nishizato, Andrea Chini,  Roberto Solano, Katsumi Maenaka 
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 教授 上田 実
掲載誌:Advanced Science
DOI:10.1002/advs.202517463
URL:https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202517463
 
 
関連リンク
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科化学専攻
東北大学生命科学研究科 兼担
教授 上田 実(うえだ みのる)
TEL:022-795-6553
Email:minoru.ueda.d2(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr(at)mail.sci.tohoku.ac.jp
 
 
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