生命機能科学専攻 膜輸送機構解析分野
膜輸送機構解析分野では、メラニン合成酵素をメラノソームに受け渡す過程を制御する分子複合体を初めて同定しました。
私達の肌や髪の色の源であるメラニン色素は、「メラノソーム」と呼ばれる特殊な小胞の中で「メラニン合成酵素」によって合成されます。メラニン合成酵素ははじめからメラノソームに存在する訳ではなく、無色の未成熟メラノソームが形成された後に小胞輸送によって運ばれています。これまでメラニン合成酵素の輸送に関わる分子群が幾つか報告されていますが、小胞に乗って運ばれてきたメラニン合成酵素がメラノソームの袋にどのように受け渡されるのかは良く分かっていませんでした。
今回、研究グループはマウスの培養メラノサイトを用いて、メラニン合成酵素をメラノソームに受け渡す過程に「膜の融合装置として働くSNARE(スネア)タンパク質複合体」(シンタキシン3、SNAP23、VAMP7の3種類のタンパク質)が関与することを初めて突き止めました。シンタキシン3とSNAP23はメラノソーム上に、VAMP7はメラニン合成酵素(Tyrp1)を含む小胞上に存在し、これらの分子が複合体を形成することにより、メラノソームへのメラニン合成酵素の受け渡しが促進されます。この複合体の
構成因子のいずれか一つの機能が損なわれると、メラニン合成酵素はメラノソームに運ばれなくなり、リソソームという分解場所で分解を受けることが明らかになりました。
今回の発見は、メラニン色素の合成レベルだけでなく、輸送や受け渡しのレベルでの制御の重要性を示すもので、本研究成果を応用した新しいタイプの美白剤の開発が今後期待されます。
本研究成果は、Journal of Investigative Dermatology電子版に掲載されました。
http://www.nature.com/jid/journal/vaop/naam/abs/jid2013156a.html
プレスリリース本文は下記URLから参照ください。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20130422_01web.pdf
本件に関する記事が毎日新聞、化学工業日報などに掲載されています。
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http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20130525ddlk04040119000c.html