生命機能科学専攻 膜輸送機構解析分野
【概要】
膜輸送機構解析分野では、メラニン色素が微小管に沿って細胞の縁の部分へと輸送される「微小管順行性輸送」を制御する分子を初めて同定しました。
わたしたちの肌や髪の色の源であるメラニン色素は、「メラノサイト」と呼ばれる特殊な細胞で合成され、「メラノソーム」と呼ばれる細胞内の袋(小胞)に貯蔵されています。メラニン色素を貯蔵したメラノソームは、細胞内に張り巡らされた二種類の交通網、微小管とアクチン線維に沿って細胞膜まで輸送されます。
メラノソームはまず、長距離で両方向(順行性・逆行性)に動く微小管輸送により細胞辺縁部へと運ばれ、次に短距離で一方向にのみ動くアクチン輸送により細胞膜近傍まで輸送されます。わたしたちの肌や髪の毛が黒くなるためには、メラノサイトでのこれら三種類の輸送のバランスがとれていることが重要になります。アクチン輸送や微小管逆行性輸送の仕組みは既に解明されていますが、最後に残された長距離を順方向に動く微小管輸送の仕組みは長らく不明でした。
今回、わたしたちはマウスの培養メラノサイトを用いて、メラノソームの微小管順行性輸送に低分子量Gタンパク質の一種「Rab1A」が関与していることを突き止めました。Rab1Aは成熟したメラノソーム上に存在しており、Rab1Aの機能阻害により核周辺でのメラノソームの凝集が引き起こされることが明らかになりました(下図参照)。
今回の発見により、メラノソームの三種類の輸送経路に関わる分子群が出そろいましたので、それぞれの輸送経路を対象とした薬剤スクリーニングが可能になり
ます。今後は複数の薬剤を組み合わせることで、より緻密な肌や毛髪の暗色化制御が輸送レベルで可能になるものと期待されます。
詳細な研究内容は、下記URLのプレスリリース文をご覧ください。