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研究科概要

研究科長あいさつ

東北大学大学院生命科学研究科長 杉本 亜砂子 


東北大学大学院生命科学研究科長
杉本 亜砂子

 
 
 私たちをとりまく世界の状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、わずか1年ほどの間に激変しました。感染症との戦いは続いていますが、パンデミックの収束には、ウイルスの同定・解析やワクチン開発をはじめとする生命科学の貢献が不可欠であることはいうまでもありません。
 
 パンデミックに加え、地球温暖化や環境破壊にともなう生物多様性の喪失などの地球規模の課題に直面し、社会における生命科学の重要性はますます高まっています。2001年に東北大学における生命科学分野の中核拠点として設立された生命科学研究科は、近年の生命科学の飛躍的な発展と社会的なニーズに応えるため、2018年に<脳生命統御科学>、<生態発生適応科学>、<分子化学生物学>の3つの専攻に改組しました。分子・細胞・組織・動植物個体から生物群集までの生命に関わるすべての階層を研究対象とし、有機化学・構造生物学・分子生物学・細胞生物学・発生生物学・植物科学・神経科学・ゲノム情報学・生態学・進化生物学などの幅広い研究分野を網羅しています。さらに、学内の複数の部局とも連携し、異分野融合による新たな研究分野の開拓もめざしています。
 
 レイチェル・カーソン(Rachel Carson, 1907-1964)は、著書『沈黙の春』で合成化学物質による生態系破壊の危険性について警鐘を鳴らし、環境保護の先駆者として社会に大きなインパクトを与えました。大学院で動物学と遺伝学を学び、執筆活動に専念するまで海洋生物学者として米国連邦漁業局に勤務していた彼女は、生物学(生命科学)について次のような言葉を残しています。
 
私は生物学を、地球とあらゆる生命体の歴史—過去・現在・未来—と定義したい。生物学を理解することとは、すべての生命体はその誕生の場である地球と結びついていると理解することである。仄暗い過去から湧き出し、不確かな未来へと連なる生命の流れは、実は、数限りない多様な生物個体から構成されるひとつの大きな力であると理解することが、生物学を理解することなのだ。(Preface to "Humane Biology Projects" by the Animal Welfare Institute, 1961)  
 
 生命科学を含め、科学の研究分野は細分化されていく傾向にありますが、地球規模の課題を抱えるこの時代だからこそ、私たちはカーソンが指摘したような俯瞰的な視点を持つ必要があるのではないでしょうか。生命科学研究科で学ぶみなさんには、生命にまつわる真理の探求を通じて培った力を、自然と共生する社会の構築に向けて発揮されることを大いに期待しています。
 
令和3年4月1日