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研究

#02 高橋健悟さん

Mr.KENGO TAKAHASHI
 
「今、輝ける人たち」第二回目は分子生命科学専攻情報伝達分子解析分野所属、博士課程後期3年の高橋健悟さんのインタビューをお送りいたします。(2018年2月掲載)
 

研究テーマ

 「一次繊毛」という言葉を聞いたことはありますか?私たち人間の身体は約60兆個の細胞から造られていますが、その一つ一つの細胞の表面には一次繊毛という突起状の構造が存在します。一次繊毛は細胞におけるアンテナとして機能することで様々な細胞外シグナルを感知し、細胞の機能や恒常性の維持に寄与しています。一方、近年一次繊毛の形成不全や機能障害が繊毛病と呼ばれる多岐に及ぶ疾患の原因であることも明らかになってきました。私はこのような繊毛異常の仕組みに迫るため、特に細胞外栄養環境に注目して一次繊毛の形成メカニズムを明らかにすることを目標に研究を行いました。本研究では、グルコース濃度の低下が一次繊毛形成を促進することを明らかにしたことに加え、細胞内の栄養状態に応じて細胞の増殖や代謝を調節することが知られているmTORC1の不活性化とサイクリン依存性キナーゼ阻害物質であるp27KIP1の上昇を介した細胞周期の停止により一次繊毛形成が引き起こされることを解明しました。

生命科学研究科での生活で印象に残っていること

 ずばりCell biology合同セミナーです。これまで私の研究室は細胞生物学系のラボが定期的に集まって開催するCell biology合同セミナー(非公式)に参加させていただいており、そこでは毎回若手を中心に様々な研究テーマについてのセミナーが開かれていました。研究室間の違いや先輩後輩の垣根を越えた熱いディスカッションはとても貴重な経験でしたし、ここで学んだことは今後の研究者人生にも大いに生きることと思います。(私の担当会が大炎上したことも振り返ってみればいい思い出です。)さらに、生命科学研究科はキャンパスが点在していることから普段は交流が難しいことが課題でしたが、本セミナーを通して多くの他研究室の方々との人脈が構築でき、自身の研究にも還元させていただくことができました。

将来の目標

 私は2018年4月から、民間企業(某メーカー)の研究所で研究活動を行う予定です。そこでこれまでに修得してきた実験手法や研究の進め方、ロジカルシンキング等を存分に生かし、実際にモノづくりに取り組んでみたいと思います。せっかく貴重な20代のうちの5年間を大学院での研究に費やして専門的スキルを身に付けたわけですので、今後は会社の中でも私にしかできない仕事や分野を切り開いていけることを目標に精進していきたいです。また、もし機会を頂ければですが、海外を拠点にした研究活動にも積極的にチャレンジしていけたらと意気込んでいます。

後輩へのメッセージ

 私の感想ですが、20代という時期はあっという間に過ぎる割に本当に貴重な時期だったなーと痛感しています。人生のうちで今でしかできないことが人それぞれあると思いますが、当然それら全てに取り組む時間はありませんので、この時期をどう過ごすかは本当に難しいですよね。大学院以前の私は計画性をもって生活していたものの、一つのことに全力で取り組むことがありませんでした。(いつまでにどの業界に就職したいからそのためにはこれくらい研究頑張ってTOEICは何点取ればもう十分か!残りの時間はバイトもサークルも色々経験しなきゃ!といった考え方で。)しかし、あることがきっかけで博士号を取得するという決意ができてからは、逆に研究だけに取り組む日々を歩んできました。結果的にですが、ひたすら何かにチャレンジし続けるという過ごし方もなかなかエキサイティングで20代でしかできない貴重な経験だったなと今さらになって感じています。当時の私のように幅広く計画して学生生活を送る方も多いと思いますが、今しかできないことをやるという意味では、(研究に限らず)挑戦的な選択肢も含めて考えてみてはいかがでしょうか。私もあと少しですが20代が残っていますので、悔いのないようにチャレンジし続けたいと思います。

PROFILE

高橋 健悟 

2012年3月 東北大学 理学部化学科 卒業
2015年3月 東北大学大学院 生命科学研究科 博士課程前期2年の課程 修了
2018年2月 東北大学大学院 生命科学研究科 博士課程後期3年の課程 在学中