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研究

#04 丸橋総史郎さん

Dr. SOJIRO MARUBASHI
 
2019年度総長賞を受賞された丸橋総次史郎さん(膜輸送機構解析分野出身)のインタビューをお送りいたします。(2020年4月掲載)
 

研究テーマ

 私たちの皮膚が紫外線を浴びると、防御反応として暗色化(日焼け)が起こります。この過程は細胞レベルで見ると、メラノサイト(色素細胞)からケラチノサイト(角化細胞)に、メラノソーム(メラニンを含む細胞小器官)が受け渡され、蓄積することによって起こっています。この一連の過程の分子機構の解明は、白皮症の治療や皮膚ガンの予防などの医学的見地、また美白化粧品の開発などの商業的見地からも重要であると考えられており、これまで様々な研究が行われてきました。しかし、ケラチノサイトにおけるメラニンの蓄積に関しては、詳細な機構はほとんど明らかになっていませんでした。私はこの蓄積に、Rab7Bというタンパク質が関与していることを発見し、ケラチノサイトにおいてこのRab7Bが、メラノソームの分解を促進することを明らかにすることができました。

生命科学研究科での生活で印象に残っていること

 生命科学研究科での研究生活を思い返すと、失敗の連続でした。うまくいった実験よりも、失敗した実験の記憶の方が多く、最初からこうした方が良かったのではないか、他の方法があったのではないかなどと、今でも考えてしまいます。失敗は成功の元と言いますが、正直に言って、こうした失敗の経験が、今の自分に生きているかはわかりません。しかし、これからの人生には何かしら生かしていきたいと考えています。
 研究以外では、生命科学研究科で色々な人と出会えて良かったです。生命科学研究科には、様々な個性を持った人が多く、非常に良い経験になりました。何気ない日常の会話でも、楽しい記憶として残っているものが多く、皆様に感謝しています。

後輩へのメッセージ

 日々の実験に追われていると、視野が狭くなってしまっていることもあります。時には一度立ち止まって考えることも大切ではないでしょうか。私は考えなしに実験を続けて、多くの時間を無駄にしました。実験内容から、自分が何を明らかにしたいのか、はたまた、自分がどうなりたいのかまで、広い視野で考えると開ける道もあると思います。また、悩んだ時は、軽い気持ちで誰かに相談してください。大抵の場合、新しい考えがもらえたり、話しているうちに自分で気がついたりします。できること、使えるもの、残された時間をもう一度見直して、それらをうまく天秤にかけることで、自分の行動を選択すると良いと思います。皆様が楽しい研究生活を送り、良い選択ができることを、応援しています。

PROFILE

丸橋 総史郎 

2015年3月 東北大学 理学部 生物学科 卒業
2016年4月 - 2017年3月 東北大学 学際高等研究教育院 修士研究教育院生
2017年3月 東北大学大学院 生命科学研究科 博士課程前期2年の課程 修了
(修士(生命科学))
生命科学研究科 研究科長賞 受賞
2017年4月 - 2020年3月 日本学術振興会 特別研究員 (DC1)
東北大学 学際高等研究教育院 博士研究教育院生
2018年3月 第4回花王メラニン研究会研究助成 採択
2020年3月
東北大学大学院 生命科学研究科 博士課程後期3年の課程 修了
(博士(生命科学))
東北大学 総長賞 受賞
生命科学研究科 研究科長賞 受賞
青葉理学振興会賞 受賞