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研究

#08 丸田優人さん

 
Dr. Keita Nakane
2023年度総長賞を受賞された丸田優人さん(膜輸送機構解析分野出身)のインタビューをお送りいたします。(2024年4月掲載)
 

研究テーマ

 私は、肌のシミに関連するメラニン色素を含んだ袋状構造物「メラノソーム」の細胞内での輸送経路に着目した研究を行いました。メラノソームは色素細胞(メラノサイト)で作られた後、細胞内を輸送され、隣接する皮膚細胞(ケラチノサイト)に受け渡されることで、肌への色素沈着が起こります。メラノソームは細胞内に張り巡らされた微小管、アクチン線維と呼ばれる2種類の道路(細胞骨格)に沿って輸送されていますが、微小管上におけるメラノソームの輸送機構やその重要性はこれまで十分に解明されていませんでした。そこで私は、主に細胞生物学的手法を用いた実験を行い、「Rab44」と呼ばれるタンパク質がメラノソームの微小管上の輸送に関与する新規制御因子であることを明らかにしました。また私は、生きた哺乳類メラノサイトでのメラノソーム輸送を動画解析するためのツールを作製し、それを用いることで、メラノソームの新たな輸送機構の提唱に至りました。

 

生命科学研究科での生活で印象に残っていること

 私は、生命科学研究科の修士課程を修了し、約10年間社会人として働いた後、2020年の秋に同研究科の博士課程に編入学いたしました。博士課程においても修士時代と同じ研究室に所属することができ、ご指導いただいた先生方および研究室の皆さんには大変感謝しています。博士課程では、新型コロナウイルス感染症が流行していたタイミングと重なり、実験できる時間が制限されることもありましたが、研究に集中できる環境や、研究室の皆さんとの豊富なディスカッションの場があったからこそ、無事に博士論文として研究成果をまとめることができました。企業での研究とは異なり、大学院では自分が興味を持つテーマについて、より深く突き詰めやすい環境であったことが印象に残っています。

 

将来の目標

 私は基礎研究と応用研究を俯瞰し、両者の橋渡しができる研究者になりたいと考えています。修士課程在籍時、研究室では企業との共同研究が進められており、研究室における基礎研究で確立した評価系を企業の製品機能の有効性評価に応用し、特許出願に至りました。その時の経験から、研究成果を社会に還元するためには、基礎研究と応用研究を組み合わせることが重要であることに気付き、上記のような研究者像を目指したいと考えるようになりました。その後、研究者としてのフィールドを企業に移し、主に応用研究活動に従事した後、再度大学院の博士課程にて基礎研究を学び直す機会をいただきました。このように、企業および大学での研究活動で培った知識と経験を活かし、基礎研究から得られた成果を応用して、どのようにして社会貢献できるのかを常に考えながら仕事に取り組んでいきたいです。

 

後輩へのメッセージ

 研究者としてのキャリアパスは多種多様ありますので、視野を広げて検討することもよいと思います。私は、修士課程を修了後に企業の研究職に従事し、商品化までの道のりには、研究開発による様々な試験データの積み重ねが必要であるということを経験しました。研究の取り組み方も企業によって異なると思いますが、開発スケジュールを定めてプロジェクトとして推進し、複数の部署と関わりながら目標達成していくやりがいも感じられました。その中で、私は基礎研究と応用研究の位置付けを再認識し、自身の基礎研究スキルをもっと向上させたいという考えから、博士課程に編入学いたしました。このように、研究への関わり方は一つではないので、皆さん自身に適したキャリアパスをじっくり考えてみることもオススメします。

 

PROFILE

丸田 優人 

2010年3月 東北大学大学院 生命科学研究科 修士課程 修了(修士(生命科学))
2010年4月  –  2020年9月  一般企業 研究開発職
2020年10月 東北大学大学院 生命科学研究科 博士課程 入学
2021年10月 - 2022年3月 東北大学高等大学院博士後期課程学生挑戦的研究支援プロジェクト学生
2022年4月 - 2023年3月 東北大学高等大学院博士学生フェローシップ学生
2023年4月 - 2023年9月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2023年9月 東北大学 大学院生命科学研究科 博士課程 修了
(博士(生命科学))
2023年10月 - 現在 一般企業 研究開発職
受賞歴
2024年3月 青葉理学振興会賞
2024年3月 東北大学 総長賞