植物生殖システム 分野
植物は発芽した場所に根を生やし、その環境に合わせた生長、生殖戦略を採用することで繁栄してきました。生殖戦略から見た場合、大きな役割を担う生殖器官として、雄ずいと雌ずいが共存する「両性花」があります。「両性花」は、自己花粉で確実に次世代を残すことができる自殖と同時に、花粉媒介昆虫との共進化を通じて、他個体との交雑による遺伝的多様性の維持を可能とする他殖も行える仕組みを構築してきました。つまり、植物は進化のプロセスにおいて、生殖器官の構造や情報伝達を分子レベルで変化させることによって、「両性花」の自殖と他殖のバランスを調整し、種ごとに周囲の環境に適した生殖システムを確立しています。その結果として、自殖だけではなく、他殖を促進する自家不和合性や雌雄異熟、また雌雄異株など多岐にわたる生殖システムが創出されています。
本分野では、植物の生殖システムのひとつである自家不和合性に焦点を当て、遺伝学的、生理学的観点から、植物の自殖と他殖を制御する分子メカニズムを明らかにし、植物の生殖戦略に対する学術的理解を深化させ、将来的には、品種改良や生態系維持などに貢献することを目的としています。