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研究者の方

細胞の大きさを制御する新たな分子を同定

細胞の大きさを制御する新たな分子を同定

2013.11.29 10:02

生命機能科学専攻 膜輸送機構解析分野

福田光則

 膜輸送機構解析分野では、腎臓尿細管の上皮細胞の大きさを制御する新たな分子を同定しました。
 胃や腸の消化管、腎臓尿細管は、単層上皮と呼ばれる大きさの揃った一層の上皮細胞が互いに密着し合うことによって成り立っています。このような上皮細胞は、隣り合った細胞や細胞外マトリックスと接する膜領域(=側底膜)といずれとも接しない膜領域(=頂端膜)を持ち、それぞれが異なる役割を果たしています。例えば、腎臓尿細管の頂端膜にはアクアポーリン2と呼ばれる水チャネルが特異的に存在し、原尿からの水の再吸収を行っています。二つの膜領域は物理的に隔てられているため、それぞれの膜領域で働くタンパク質は細胞内小胞輸送と呼ばれる仕組みによって、別個に輸送されています。私達の研究室では、これまで頂端膜への小胞輸送を制御する分子として低分子量Gタンパク質の一種Rab27とその結合分子「Slp2-a」を同定しています。Slp2-aは比較的分子量の大きなタンパク質で、小胞輸送を行う際に重要なRab27と結合する部位以外にも、機能未知の部位が存在しており、それらの上皮細胞における役割はこれまで明らかではありませんでした。
 今回、私達はイヌの腎臓尿細管由来の細胞株を用いて、Slp2-aに上皮細胞の大きさを制御する新たな機能があることを突き止めました。Slp2-aは細胞膜に存在しており、その機能を破綻させると細胞の大きさが肥大することが明らかになりました。また、腎臓肥大を伴う嚢胞性腎疾患のモデルマウスでSlp2-aの発現異常が観察されたことから、今後Slp2-aの下流のシグナルをターゲットにした嚢胞性腎疾患の新たな治療法への応用が期待されます。

Journal of Cell Science電子版に掲載されました

プレスリリースは次のとおりです。 

nori※m.tohoku.ac.jp (※を@にしてください)