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研究者の方

ヒトゲノム上に遺伝子重複砂漠を発見

ヒトゲノム上に遺伝子重複砂漠を発見

2013.08.06 18:06

生態システム生命科学専攻 生物多様性進化分野

牧野 能士河田 雅圭

私たちは約2万の遺伝子を持っていますが、遺伝子が増えたり(遺伝子重複; 注1)消失したりすることで、各々の遺伝子の数が個人によって違っていることがあります(コピー数多型; 注2)。この遺伝子数の違いは、しばしば、自閉症や知的障害といった病気の原因となることが知られています。これまでに、コピー数多型のある遺伝子は、ゲノム中に偏って存在している事が報告されていますが、その原因についてはほとんど分かっていませんでした。東北大学大学院生命科学研究科生物多様性進化分野の牧野能士助教と河田雅圭教授はアイルランド・トリニティカレッジのイーファ・マックライザット博士と共同で、特定のタイプの遺伝子群が周辺に存在する遺伝子のコピー数多型を抑制していることを突き止めました。牧野助教らは、脊椎動物の初期進化で起きた全ゲノム重複に由来する遺伝子「オオノログ」(注3)に着目し、オオノログとその他の遺伝子のゲノム上の距離を調べました。その結果、オオノログの近くにある遺伝子はコピー数多型がない傾向にあり、逆にオオノログから離れて存在する遺伝子の多くがコピー数多型を示しました。特に、オオノログが高密度で存在するゲノム領域では、コピー数多型が強く抑制されていました。そのような領域は、数億年に渡る脊椎動物の進化過程において遺伝子が数を増やせない遺伝子重複砂漠であることも明らかにしました。今回の研究成果は、オオノログを含むゲノム領域の重複や消失が非常に有害(致死や病気を引き起こす)であることを示唆しています。このことから、遺伝子重複砂漠の領域内に存在しているコピー数多型は、病気と関係している可能性が高く、その領域のコピー数多型を調べることで、病気に関る遺伝子の効率的な探索が可能になると期待されます。

詳細は、下記PDFファイルよりご覧ください。
プレスリリース文

本研究成果は、8月6日の英科学誌“Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)”に掲載されました。
http://www.nature.com/ncomms/2013/130806/ncomms3283/abs/ncomms3283.html