東北エコロジーセミナーを開催しました.

2024年10月18日に第6回東北エコロジーセミナーを開催し,東京大学の岡村悠 博士と当研究室の番場が講演を行いました.岡村さんには「わさび食う虫も好き好き」なぜシロチョウは辛いアブラナ科草本を食べられるのかというタイトルで,シロチョウがアブラナ科植物のグルコシノレートをどのように分解し,植物の食植動物への防御応答に対応しているのかについてお話しいただきました.議論が盛り上がり,大変楽しいセミナーになったかと思います.岡村さん,ありがとうございました!

岡村 悠 博士 ( 東京大学大学院理学系研究科 植物進化生態学研究室 学振PD: ResearchMap)

2024年度植物学会宇都宮大会に参加しました

9月14日-16日に宇都宮にて開催された日本植物学会第88回大会に当研究室の中野さん (M2), 橋本さん (助教), 番場さん (助教)が参加し、それぞれの研究成果を発表されました。

演題は下記のとおりです。

  • 「屋外圃場で観察されるミヤコグサ系統依存的な微生物相互作用」中野 佑太1), 番場 大1), 東 優佑1), 佐藤 修正1). 1)東北大・院生命科学
  • 「根粒菌エフェクターに起因するミヤコグサの根粒共生制御機構の解析」橋本 駿1), 番場 大1), 日下部 翔平1, 2), 高澤 瑞希1), Ying Cui1), Piromyou Pongdet3), Songwattana Pongpan3), Tittabutr Panlada3), Boonkerd Nantakorn3), Teaumroong Neung3), 内海 俊樹4), 三井 久幸1), 佐藤 修正1). 1)東北大・院生命, 2)福島県農業総合センター, 3)スラナリ工科大, 4)鹿児島大・院理工
  • 「図鑑情報とLLMを活用した大規模表現型抽出 ~花色情報とオカレンス情報を統合したビッグデータ解析~」番場 大1), 佐藤 修正1). 1)東北大学・院・生命

みなさま、お疲れさまでした!

この夏はいろいろな研究者が立ち寄ってくれます

現在、当研究室にはPongdet Piromyou 博士 (Suranaree University, Thailand) が滞在しております。Piromyou 博士はマメ科植物根粒菌共生などに関連するType III effector systemについて研究しております。タイのスラナリ大学とは交流が盛んで、昨年度もPongpan Songwattana 博士がいらっしゃりましたし、当研究室のCuiさん (D3) も昨年度合計半年ほとスラナリ大学にお世話になっておりました。これらの研究グループとの共同研究も次々とパブリッシュされていますので、このような関係を続けていきたいものですね。

Apisit Songsaeng et al. (2024) Enhancing Resistance to Cercospora Leaf Spot in Mung Bean (Vigna radiata L.) through Bradyrhizobium sp. DOA9 Priming: Molecular Insights and Bio-Priming Potential. Plants https://doi.org/10.3390/plants13172495

—–

また、昨日までは後藤崇支 博士 (元基礎生物学研究所、現Aarhus University, Denmark) が滞在しておりました。後藤さんはマメ科植物と根粒菌の共生関係の分子機構に関連する植物側因子の研究を進めており、現在はデンマークのJensラボにて研究員をしております。また当研究室の番場さんとも共同研究をしており、こうした若手ネットワークが育ってくるのもいいものですね。

植物微生物研究会第33回研究交流会にて学生が発表しました

8月27日-29日に開催された植物微生物研究会第33回研究交流会に当研究室の大泉さん (M2)、中野さん (M2)、Yusdarさん (助教)、橋本さん (助教)、番場さん (助教) が発表を行いました。発表内容は以下になります。

  • 大泉優夏さん (ポスター):酸素存在下においても窒素固定活性を示すメタン酸化細菌
  • 中野佑太さん (ポスター):植物根内に形成されるAM菌群集に対する植物の効果
  • Yusdar Mustaminさん (口頭):ミヤコグサ根に形成される微生物群集より作出したSynthetic community
  • 橋本駿さん (口頭):ミヤコグサ根粒菌共生における根粒菌エフェクターに関連する植物遺伝基盤
  • 番場大さん (ポスター):ミヤコグサに近縁なLotus kryloviiのゲノム解析

本研究交流会は当初高知大学で開催される予定でしたが、台風10号の影響によりオンライン開催に変更されました。変更を決断し、そこからオンライン環境を準備した運営に感謝を。

今年もイネサンプルの採集が始まりました

昨日は鹿島台圃場でイネサンプルの採集を行いました。我々はイネの根に生息するメタン酸化細菌の調査を目的としているので,一般的な稲刈りのような採集ではなく,地下部をスコップで掘り起こします。まだ栄養成長期なので簡単ですが,幼穂形成期,出穂期となるにつれて根が強くはるので,採集はどんどんハードになっていきます。作業お疲れさまでした。

土壌微生物学会にてメタン酸化細菌の研究成果を紹介しました

6月15日-16日に名古屋大学で開催された日本土壌微生物学会2024年度大会に当研究室のArgenさん (助教) と三井先生 (准教) が口頭発表を行いました。三井先生は日本の水田から採取されたメタン酸化細菌がどのような特徴を持っているのか,イネとの相互作用を含めて観察した結果を示しました。Argenはメタン酸化細菌の一部の菌株が酸素存在下においても窒素固定活性を持っていることを実験的に示しました。これらの成果はそろそろ論文となる (はず) ですので,詳細はその時に解説しましょう。

発表内容は以下。

  • Characterization of rice root colonization by diverse methanotroph isolates from paddy-grown rice plants
    Argen Adem Abdela1, Taiho Komatsu1, Fumika Oe2, Rina Shinjo2, Takeshi Watanabe2, Susumu Asakawa2, Kiwamu Minamisawa1, 〇Hisayuki Mitsui1, Shusei Sato1
    (1Graduate School of Life Sciences, Tohoku Univ., 2Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya Univ.)
  • Unique expression patterns of nitrogen fixation genes in an aerobic methane-oxidizing bacterium under high oxygen conditions
    〇Argen Adem Abdela1, Rina Shinjo2, Takeshi Watanabe2, Susumu Asakawa2, Kiwamu Minamisawa1, Hisayuki Mitsui1, Shusei Sato1
    (1Graduate School of Life Sciences, Tohoku Univ., 2Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya Univ.)

千葉県でフィールドワークを行いました

今週末も昨年度と同様に房総半島にてフィールドワークを行いました。目的は千葉県での野生ミヤコグサと共生微生物群集の調査になります。初日は移動と木更津土曜学校でのボランティアを行いました。小さな子供たちを外国人と交流させたいとのことで,Yusdarさんと滞在中のAkyolさんに子供たちは興味津々です。

日曜日には本格的にフィールドワークをはじめ,まずは昨年訪れた地点で再調査を行いました。こちらも昨年度以前から管理者の方に良くしていただいており,仙台銘菓を携えご挨拶にも伺いました。

その後は,卒業生である磯村さんが関わっているSHIBUYA-IWAI-PARKへ伺いました。こちらは2018年に廃校した渋谷区立富山臨海学園を再生し,こどもが遊び大人も学べる臨海公園として再生するプロジェクトになります。また,その後は野島崎で植物調査を行いひと段落になります。

今年も田植えを行いました (雨の中で)

本年度も田植えを行いました。今年のイネ研究も土壌に存在するメタン酸化細菌との共生関係を活用した水田由来メタンの放出削減に関連するものです。

あいにくの天気で大変でしたが,みんな頑張ってくれました!お疲れさまでした!

デンマークからAkyol博士が来訪しています

昨日より,Aarhus大学 (デンマーク) よりTurgut Akyol博士が研究室に滞在されます.Akyol博士はINROOT/CCRPプロジェクトの若手研究者招聘プログラムで来日され,3週間滞在されます.Akyol博士は2018年に当研究室 (分野独立前) にて学位を取得し,その後もAarhus大学で精力的に研究を続けておられます.滞在期間中は我々の研究室で実験や,ミヤコグサ野生生息地調査などに携わります.本日は現在進行中のプロジェクトについてセミナーしていただき,その後歓迎会を行いました.

番場さんの論文がFEMS Microbiology Ecologyにて出版されました

当研究室の助教である番場さんの論文がFEMS Microbiology Ecologyより出版されました。

持続可能な農業を推進する上で,植物と土壌微生物の関係を理解することは不可欠であり,これまで数多くの研究が行われてきました。我々の研究グループはマメ科植物ミヤコグサを用いて,植物品種,土壌微生物群集,土壌環境の三つの要素とそれらの相互作用が植物生育に及ぼす影響を実験室内で評価する系を確立しました。研究結果から,植物品種と微生物群集の組み合わせが,微生物群集の差異よりも生育への影響が大きいことが明らかになりました。この発見は,植物品種と土壌微生物群集の組合せを最適化することで植物生育を向上するという新たな農業戦略を促進し,持続可能な農業の実現への貢献が期待されます。また,これらの知見は農業だけでなく植物の保全や生態学研究にも役立つ可能性があります。本研究では,どのような遺伝子型を持つ植物品種がどのような土着の土壌微生物群集と出会うかどうかが,植物がその場所で生育するのに重要な要素であることを示しています。このような知見は,特に絶滅危惧植物の生息域外保全を行う場合に役立てられる可能性があります。

Masaru Bamba, Turgut Yigit Akyol, Yusuke Azuma, Johan Quilbe, Stig Uggerhøj Andersen, Shusei Sato. (2024) Synergistic effects of plant genotype and soil microbiome on growth in Lotus japonicus. FEMS Microbiology Ecology [Link] [プレスリリース][報道]